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  • 自動車のABS(アンチロックブレーキシステム)とは?
  • 自動車のABS(アンチロックブレーキシステム)とは?

    2023.10.10更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    自動車のABSは、急ブレーキ時でもハンドル操作を行えるようにすることで、事故を回避する安全システムの一つです。本記事では、ABSの基本的な知識を知りたい人に向けて、動作原理や作動時の注意点などを解説します。

    ABSとは

    ABSとは、「アンチロックブレーキシステム」を略した単語で、急ブレーキを掛けた時にタイヤがロックするのを防ぐ機能のことです。タイヤがロックすると道路の上をタイヤが滑るため、ハンドルが効かず緊急時の回避行動が取れなくなります。ABSが作動すると、急ブレーキ中でもハンドルが効くため、緊急回避が可能となり、事故を減らせるようになるのです。

    ちなみに、昔はブレーキを効かせたり離したりする「ポンピングブレーキ」を手動で行いタイヤのロックを防ぐのが推奨されてきました。ただ、人が緊急時にとっさに行うには難易度が高く、かつタイヤ毎の制御が不可能という問題がありました。

    そこで、ポンピングブレーキを自動で行うシステムの開発が行われるようになり、1978年にボッシュがABSシステムを搭載した自動車を販売したことを皮切りに、世界中の自動車にABSが搭載されるようになりました。現在ではABSの搭載が義務化されており、自動車に当たり前に搭載されている機能として認知されています。

    ABSが動作する仕組み

    続いて、ABSの動作原理を紹介しましょう。ABSは、タイヤの回転数などを検知するセンサーと、ブレーキオイルの油圧を細かく制御する機構に分かれています。センサーは、急ブレーキが踏まれているか、車輪がロックしていないかを確かめるために使われます。

    一方、ブレーキオイルの油圧制御はブレーキの強さを自動制御するために必要です。ブレーキオイルの油路に減圧用のバルブを取り付け、車輪の回転数に合わせてバルブの開閉を微調整することで、車輪がロックしないぎりぎりの強さでブレーキを掛け続けます。

    ちなみに、ABSは通常のブレーキ時に掛けても意味がないので、一定以上の強さで急ブレーキをかけた時にのみ作動するのが基本です。

    また、本来の目的とは異なるのですが、ABSには急ブレーキの踏み込みが甘い場合、油圧を高めてブレーキを強く効かせるサポート機能も付いています。これは、運転初心者であるほど急ブレーキ時の踏み込みが甘くなることから、事故を防ぐ手段の一つとして搭載されています。

    ABSランプの意味

    スピードメーターに「ABS」というマークがあることをご存知の方もいるのではないでしょうか。これは、ABSに異常が発生したことを報せるための警告等です。ABSランプが点灯している場合、急ブレーキ時にABSが作動せず、タイヤがロックされて大事故につながる可能性があります。

    ABSは急ブレーキをかけた時にしか作動せず、普段は違いが分からないので放置しがちですが、必ず点検・整備を行ってもらうようにしましょう。ちなみに、万が一への注意として、ABSランプの点灯時には通常のブレーキ時に正しく制動が行えるかを確かめてから、走行してください。

    ちなみに、バッテリー残量が少ない場合や、車輪の回転数センサーが汚れて機能しない場合なども、ABSランプが点灯する原因となりえます。

    ABS作動時の注意点

    ABSはタイヤのロック防止という高度な制御を可能としますが、普段見えづらい機能であることから、性能や操作への理解が甘くなることが多いです。ここからは、ABSを用いる上で重要な注意点をお伝えします。

    ABS作動時はブレーキを踏み続ける

    まず、ABSの作動時に発生する振動や異音に対する注意点です。最近の車では減ってきましたが、特に昔の車では、ABSが作動した際に、ブレーキペダルへの大きな反動や、異音が発生します。これは、正しくABSが作動しているという証であり、不具合ではないため、気にせずブレーキを踏んだままにしましょう。

    また、ABS作動時にポンピングブレーキを行うと、正しくABSが機能しなくなってしまいます。ABSが作動したと感じたら、ポンピングブレーキは止めるようにしてください。

    制動距離が縮まるわけではない

    もう一つ、ABSについて誤解されがちなのが、ブレーキの利きが良くなり制動距離が短くなる、ということです。ABSの目的はあくまで「急ブレーキ時にハンドル操作が行えるようにすること」なので、基本的には制動距離に変化はありません。

    雨で濡れた路面などでは、ABSが作動することで制動距離が短くなることもありますが、逆に凍結路面や砂利道などでは、ABSが作動した方が制動距離が伸びることもあります。そのため、ABSはあくまで「緊急時の補助機能」であることを理解して、安全運転を行うことが重要です。

    バイクのABSにはさらなる進化も

    ABSはバイクや原付においても義務化されていますが、バイクの場合は2輪走行で転倒の危険もあるため、より細かい制御が重要になります。特に、昔のABSでは作動時の振動が大きいため、停止前にバランスを崩し転倒してしまう危険性が指摘されていました。

    最近では、転倒につながる振動が抑制されただけでなく、コーナー時に適切なブレーキ制御を行う「コーナリングABS」といった製品も開発されています。コーナリングABSでは、バイクの傾斜を検知し、車体の傾斜角度に応じた最適なブレーキングを行うことで、バイクの姿勢制御に影響を与えずにタイヤロックの防止を実現するのです。

    思いがけない状況でのブレーキ時でも安心感が生まれるため、バイクの事故を防ぐ存在として注目されています。ちなみに、オフロードバイクの場合はタイヤを意図的にロックさせることで旋回する技術があるため、ABSを手動でOFFにできる機能も搭載されています。

    まとめ

    今回は、自動車において必ず搭載されている安全機能「ABS(アンチロックブレーキシステム)」について解説しました。ABSは、自動車で急ブレーキを掛けた際、車輪がロックしハンドル操作が不能となるのを防ぐことで、事故の回避をサポートする装置です。

    緊急時における重要な安全機能の一つではありますが、制動距離を短くする効果はないため、機能に対する過度な期待は禁物です。もしもの時の補助機能として捉えておき、安全運転を心がけるようにしましょう。

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