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  • 樹脂基板に代わるガラス基板とは?注目される背景やメリットを解説!
  • 樹脂基板に代わるガラス基板とは?注目される背景やメリットを解説!

    2024.12.13更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    半導体業界で注目されているガラス基板を聞いたことはあるでしょうか。今回は昨今注目を集めているガラス基板について、注目されるようになったきっかけやメリット、課題、展望などを解説します。

    ガラス基板が注目されはじめた背景

    そもそもガラス基板とは、名前の通り基板のコア素材に薄いガラスを利用した半導体のことです。従来はコストが安価で機械的強度や化学的耐久性に優れる樹脂製の基板が主流だったにも関わらず、なぜ今になってガラス基板が注目を集めているのか、まずはその理由を解説します。

    樹脂製半導体基板の限界

    半導体回路の集積度が1年半から2年で倍になるというムーアの法則に従い、半導体業界はこれまでも集積度の高い半導体の開発に力を入れてきました。特に最近では生成AIなどの登場により、これまで以上に高い性能を持つ半導体が求められるようになってきた一方で、微細加工技術の高度化に伴い基板に欠陥や不良が生じる確率も無視できなくなり、歩留まりの低下が問題視されるようになってきました。そこで樹脂製に比べて多少製造コストなどが掛かるものの、市場のニーズに答えられる基板として、ガラスをコア素材として使用する基板が注目されるようになってきたのです。

    ガラス基板が注目されるようになったきっかけ

    最近になって注目を集めているように感じられるガラス基板ですが、実は開発自体は10年以上前に米国の米ジョージア工科大学で始まっており、2010年には試作品も完成しています。しかし当時は基板自体に微細な割れ(マイクロクラック)が生じたり、樹脂基板より製造コストが高いことが問題となり、実用化には至りませんでした。ところが最近になって前述の通り要求が高度化したことや、昨年Intel社が2020年後半にガラス基板の量産を始めると発表したことを受け、ここにきて再び注目されるようになったのです。

    ガラス基板を用いるメリットとは?

    続いてガラス基板を使用するメリットについて、樹脂製の基板と比較しながら解説していきます。

    熱による歪みが抑えられる

    ガラス基板は素材自体の熱膨張率がシリコンに近いため、回路の集積化や大面積化に伴う歪みが抑えられます。熱膨張率の異なる素材が集積した半導体基板では、素子が発熱した際に膨張率の違いによる歪みが発生し、その歪みは集積度や面積が大きくなるほど顕著になっていきます。実際、高集積化や大面積化が要求されている昨今では、樹脂とシリコンの熱膨張率の違いによる反りや歪みが問題視されていました。しかし樹脂よりもシリコンに近い熱膨張率を持つガラスをコア素材として使用すれば、熱膨張率の違いによる歪みが抑えられるため、結果として熱膨張を気にすることなく回路集積度や面積を向上させられるようになったのです。

    平坦度が高く回路の微細化が容易

    ガラス基板は表面の平坦度が樹脂製よりも高いため、回路配線自体の幅や配線同士の間隔、配線と素子を繋ぐ各種ホールなどの微細化が容易になったと言われています。というのも数μmオーダーで製作する半導体では、僅かな表面の凹凸であっても想定外の短絡を招く要因となり得ます。

    しかし平坦度が高いガラスであれば、凹凸の誤差によって不必要に導通する箇所が減るため、結果的に従来よりも回路の微細化が可能となるのです。これにより回路配線は5μm以下程度、ビアホールは100μm以下程度まで微細化ができると言われ、Intelの見立てではこれらを組み合わせることで、最大で10倍程度の回路集積化が実現できると言われています。

    誘電率が低く高速通信でも損失が低い

    樹脂に比べて誘電率が低いガラスを用いることで、高周波信号を扱ったときの誘電損も抑えることができます。そもそも誘電体とは、直流電流に対しては絶縁体と同じく電気を流さない性質がある一方で、交流信号を受けると内部で分極を生じ、電気を溜め込む性質を持つ物質のことです。

    誘電体に交流信号を加えると内部分極が繰り返し発生することになり、この時の分極エネルギーは本来の信号の役割を果たしていないため、損失として扱われます。ガラスは樹脂よりも誘電率が低く誘電損も抑えられるため、樹脂基板では損失がネックで扱えなかった信号もガラス基板では問題なく扱えるようになったのです。

    剛性が高く微細化に伴う誤差が少ない

    ガラスは樹脂よりも剛性に優れているため、微細な加工を施した際の誤差も最小限に抑えることができます。そもそも剛性とは物体に物理的な応力を加えた際、どれだけ変形しづらいかを表す性質のことで、剛性が高いほど力を加えた際の変形が少ない素材と言えます。数μmオーダーの微細な加工を行う半導体回路では、僅かな変形であっても回路配線の重なりやスルーホールのズレなどを招く要因になり得るため、樹脂よりも剛性の高いガラスを使用することで、加工時の変形による不具合を最小限に抑えられるようになったのです。

    高温環境下でも物性が安定している

    ガラスは樹脂に比べて高温環境下での物性変化も少ないため、樹脂基板では動作できないような温度環境でも安定した動作が可能だと言われています。また放熱性も優れているため、樹脂製の半導体素子を使用する場合に比べて排熱能力を下げることができ、結果として回路の集積度向上や回路の小型化が実現できます。さらにインダクタやコンデンサなどの素子を高温処理によって埋め込むこともできるため、回路設計の自由度が向上するメリットもあります。

    ガラス基板を取り巻く課題

    ガラス基板は素材自体の価格は樹脂基板に比べて安価であるものの、製造に掛かるコストは樹脂基板より高いと言われています。特に高い技術力が求められるビア加工(穴あけ)にコストが掛かるため、ガラス基板特有のメリットが求められない業界では、わざわざガラス基板を採用するメリットはないと言えるでしょう。また加工時にクラックや損傷が発生する課題も残されているため、たとえ導入メリットがあると感じても品質低下を恐れて導入が進まない企業も少なくないでしょう。

    ガラス基板に対する日本企業の動き

    米国企業が牽引しているイメージの強いガラス基板ですが、実は日本企業もガラス基板の性能向上に向けて様々な取り組みを行っています。例えばAGCは2024年2月に発表した中期経営計画において、次世代の半導体パッケージに向けたガラス基板の開発を本格化する方針を示し、半導体の更なる高集積化や高性能化を実現すると謳っています。

    また日本電気硝子株式会社もガラス粉末とセラミック粉末を混合し、微細なビア加工が容易な新素材の開発を発表しています。他にもFICTがガラスを複数枚積層することで切り出し時の割れを抑えたガラス基板を開発するなど、意外に多くの日本企業がガラス基板に積極的な姿勢を見せているのです。

    まとめ

    今回は半導体業界において注目を集めているガラス基板について、注目を集めるようになった背景やメリットなどを中心に解説してきました。依然として小型化や集積化に対するニーズが高まり続けている半導体業界において、これからの発展を左右する重要な技術であることが分かったのではないでしょうか。興味が湧いた方は各社の取り組みにも引き続き注目していくことをオススメします。

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