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  • IGBTとはどんなトランジスタ?特徴や動作原理、使い方を解説!
  • IGBTとはどんなトランジスタ?特徴や動作原理、使い方を解説!

    2024.08.08更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    IGBTは、大型家電や輸送機器において必要不可欠な存在となっています。ただ、ほとんどがモジュール化されているため、IGBTそのものの原理や仕組みについて触れる機会は減ってきているのではないでしょうか?そこで本記事では、IGBTの原理やメリット・デメリット、使い方などについて詳しく解説します。

    IGBTとは

    引用:富士電機株式会社

    IGBTは「Insulated Gate Bipolar Transistor(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)」を略して呼ばれる電子部品です。1980年頃に開発されたパワー半導体の一種で、高電圧・大電流の回路における高速スイッチングが行えることから、電力制御を始めとした幅広い用途で使われるようになりました。

    最近ではパワーMOSFETなどが登場し、スイッチング速度の違いからIGBTが採用されるケースは減りつつあります。ただ、現在でも多くの製品に採用されており、高電圧・大電流デバイスを支える欠かせない存在の一つといえます。

    IGBTの持つ特徴

    IGBTは「MOSFET」と「バイポーラトランジスタ」を組み合わせた構造をしており、それぞれの特徴を組み合わせた性質を持っています。ここでは、MOSFETとバイポーラの説明を交えながらIGBTの特徴を解説します。

    MOSFET

    MOSFETは「電界効果トランジスタ」の一つで、ゲートの電圧によってスイッチをONするトランジスタのことです。ゲート電圧から生まれる電界を受けてコレクタ-エミッタ間に空乏層ができ、電流の流れる経路ができることでスイッチがONします。

    ゲート電圧でON/OFF制御を行うためスイッチング速度が速いといったメリットがあり、トランジスタの中でも最も多く使われています。ただ、耐電圧を上げるとオン抵抗が高くなることから、高電圧・大電流を流す用途では損失が非常に大きくなるため、使いにくいという欠点を持っています。

    MOSFETの詳しい動作原理などを知りたい方は「MOSFETとは何?動作原理や用途、使い方を解説!」をご覧ください。

    バイポーラトランジスタ

    バイポーラトランジスタは、最も古い歴史を持つトランジスタです。電流駆動型のトランジスタで、ベース-エミッタ間に電流を流すとその電流が呼び水となってエミッタ-コレクタ間の絶縁が破れ、スイッチがONされる仕組みとなっています。

    トランジスタとしての採用数はMOSFETに劣るものの、利得が高く、微小なベース電流で大電流の制御が可能という特徴を持っており、分野を問わず多くの用途で使われています。また、高電圧・大電流条件においては、キャリア濃度が増加しインピーダンスが下がる「伝導度変調」効果によってオン抵抗を低く保てるメリットもあります。

    ただし、電流駆動のためスイッチング速度が遅いこと、またスイッチON時はベース電流を流し続けるため損失が大きくなるなどのデメリットもあり、使用時には注意が必要です。

    IGBT

    ここまでのように、MOSFETとバイポーラトランジスタはどちらもデメリットを持っており、高電圧・大電流の用途で使うのが難しいという課題がありました。そこで、MOSFETを入力段、バイポーラトランジスタを出力段に入れることで、両方のメリットを活用できるようになったのがIGBTです。

    バイポーラトランジスタと同じで「伝導度変調」によってオン抵抗を抑えることができ、また電圧駆動でスイッチングするため、バイポーラトランジスタよりも高速なスイッチングが可能となります。

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    IGBTの動作原理

    出典:ROHM

    それでは、IGBTがどのような原理で動作しているのかを説明しましょう。例として、PNPN構造を持ったIGBTの構造と動作原理について解説します。PNPN型のIGBTは上記の構造をしており、以下のような流れで動作します。

    ①IGBTのスイッチを入れる際には、ゲート端子に正の電圧を印加します。すると、ゲート端子付近のPエミッタ層に空乏層(チャネル)が生じてN+層、N-ドリフト層が導通するようになります。

    ②N+層、N-ドリフト層が導通すると、電子がN+層からN-ドリフト層に移動し始め、コレクタ-エミッタ間に電流が流れ始めます。ここで、電子の流れに対応して正孔がP+コレクタ層からN-ドリフト層に移動するため、N-ドリフト層のキャリア濃度が増加して「伝導度変調」が生じます。

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    IGBTの設計上の注意点

    最後に、IGBTを設計する際に注意すべき点についてお伝えします。

    ゲート開放時にコレクタ-エミッタ間電圧を入れない

    まず、ゲート端子が開放状態になる際は、コレクタ-エミッタ電圧を入れないようにしましょう。コレクタ-ゲート間には帰還容量と呼ばれる容量成分が存在するため、ゲート端子が開放されていると容量成分を通して電荷が蓄積され、最終的にIGBTがONしてしまいます。

    知っている方にとっては当然の知識ではあるものの、回路構成が複雑になると意外と見落としがちになるため、設計時には忘れないようにしてください。

    定格電圧にはMOSFET以上に注意

    IGBTの各端子に定格電圧以上のサージ電圧が入った場合、MOSFETよりもダメージが入りやすいことにも注意しましょう。MOSFETなどであれば、一定以上の逆電圧がかかった場合にアバランシェ降伏を起こし、逆電圧が熱として消費されるため、瞬間的なサージ電圧への耐性は意外と高いです。

    一方、IGBTはPNPN構造であることからアバランシェ降伏が原理的に生じないため、瞬間的なサージでも電力の逃げ場がなく、部品の破損につながってしまいます。モジュール品の場合は保護回路が入っていることも多いですが、そうでない場合は自身で対策する必要があります。

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    まとめ

    今回は、IGBTの原理や仕組みについて解説しました。IGBTは、MOSFETとバイポーラトランジスタ構造の両方の特性を組み合わせ、高電圧・大電流用途で使いやすい性能を持ったパワー半導体です。ただ、スイッチング速度に限界があることや、サージ電圧に弱いなどの注意点もあるため、採用を検討されている際には IGBTの仕様を確認し、求める性能を満たすか確認ください。

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