電気二重層キャパシタ(EDLC)の仕組みや用途、欠点などを徹底解説!
2024.08.08更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶2000年ころから開発が進み、近年になって利用が広がりつつある電気二重層キャパシタ。スーパーキャパシタとも呼ばれ、そのエネルギー密度の高さから注目を浴びていますが、どのような原理で動作しているのでしょうか。本記事では、電気二重層キャパシタの仕組みや特徴、用途などをわかりやすくお伝えします。他のコンデンサや二次電池との違いを学ぶ上での参考にしてください。
電気二重層キャパシタとは
引用:ニチコン株式会社
電気二重層キャパシタは、コンデンサと二次電池(バッテリー)の中間の性能を持っている蓄電装置のことです。電極に電圧を印加した際、電極と電解液の間に正負のイオンが薄い膜のような形で並ぶ「電気二重層」現象を蓄電に使うことから名づけられました。
電気二重層キャパシタの量産が始まったのは1970年ころで、当初は1F程度の静電容量が蓄電できる程度の能力でした。しかし、今では2000F以上の大容量品も実用化されており、さらなる大容量化に向けた開発も続いています。充放電速度の速さや寿命の長さなど多くの特徴があるため、リチウムイオン電池などの代わりにバッテリーの主流となる可能性もあり、最も期待されている蓄電装置といえます。
電気二重層キャパシタの仕組み
引用:日本ケミコン株式会社
それでは、電気二重層キャパシタの仕組みを解説しましょう。電気二重層キャパシタは、活性炭の電極と、さまざまな種類の電解液で構成されています。電極に電圧をかけると電極表面に電解液のイオンが吸着されていき、電気二重層を形成します。すると、電気二重層の両端がコンデンサの電極と同じ働きをするため、電極付近に一定量の電荷を貯められるのです。
ここで、活性炭は多孔質構造となっており表面積が非常に広くなっています。電気二重層は電極の表面にまんべんなく発生することから、活性炭は大量のイオンを吸着し、大きな静電容量を実現しています。
なお、電気二重層は低い電圧でしか発生しない(電圧が高いと電気二重層が破れて化学反応を起こしてしまう)ため、単体では3V程度の電圧までしか蓄電できません。そのため、何列にも直列させてキャパシタを接続することで、出力電圧を高めています。
電気二重層キャパシタの特徴
続いて、他の電池やコンデンサと比べて、電気二重層キャパシタがどのような特徴を持っているかを解説します。
高速・大容量の蓄電が可能
まず、電気二重層キャパシタの最も大きな特徴は、電荷を大量に蓄電しつつ高速に充放電を行えることです。バッテリーは大量の電気を蓄電できますが、一度に出力できる電荷の量が限られるため、充電に時間がかかり、出力できる電流も限られます。一方、コンデンサは瞬間的に大容量の充放電が可能ですが、蓄電量はアルミ電解コンデンサでも数F程度が限界なので、バッテリーの代わりに使うことはできません。
その点、電気二重層キャパシタは、二次電池に匹敵するほどの充電容量を持ちつつ、充放電の特性はコンデンサと同じ挙動を示すので、高速・大容量の充放電が可能です。バッテリーでは数時間かかるような充電でも数秒で充電可能であり、瞬間的な大電流の供給も可能なので、より電池利用の幅が広がることが期待できます。
充放電による劣化が少ない
電気二重層キャパシタでは、一般的な二次電池のように化学反応で充電を行うのではなく、あくまでイオンを吸着させることで充電を行います。充放電に化学反応が伴わないため、バッテリーのような充放電による劣化が生じません。
リチウムイオン電池もイオンを吸着して充放電する原理で動きますが、リチウムイオン電池が数千回程度で劣化するのに対し、電気二重層キャパシタの寿命は10万回以上の充放電が可能であり、さらなる電池寿命の向上が期待できます。
完全放電が可能
完全放電を行った際に特性が劣化しないのも、電気二重層キャパシタのメリットです。リチウムイオン電池を始め、電池の多くは電荷を完全に放電させてしまうと過放電という現象が生じ、電極が溶けて寿命が極端に短くなります。
そのため、一定以上の電荷を残すように工夫して使用しなければなりませんでしたが、電気二重層キャパシタではこのような配慮が不要なので、より使いやすくなります。
電気二重層キャパシタの用途
電気二重層キャパシタは、小型から大型まで幅広い種類が開発されており、それぞれで用途の幅も変わります。主に用いられている用途を紹介します。
スマホなどのデジタル機器
スマホやゲーム機などのデジタル機器においては、バックアップ電源として小型の電気二重層キャパシタが使用されています。バックアップ電源を入れることで、バッテリーが切断されてもデータを保存しつづけることができます。また、電気二重層キャパシタは出力が大きいので、起動時などでパワー不足になる回路に搭載し、補助電源として活用する場合もあります。
鉄道の電力保存装置
鉄道車両においては、回生ブレーキによる発電電力を地上設備に充電し、再利用する方式が一般的です。この電力を効率的に蓄電する方法として、蓄電池と電気二重層キャパシタが採用されています。特に電気二重層キャパシタは急峻な回生電力が蓄電できることから採用されており、エネルギーロスの少ない電車運行に貢献しています。
発電所などでのバッファ電源
発電所や工場などで、電源電圧の変動を抑えるバッファとしても電気二重層キャパシタは利用されています。風力や太陽光発電は、周囲環境によって発電量が変化するため出力電圧も安定しません。そのままでは電源として利用するのが難しいので、一旦電気二重層キャパシタに蓄電し、その後取り出すことで電圧変動を抑えています。
もちろん、他のバッテリーでも同様の機能は満たしますが、寿命が長くメンテナンスが不要という点においては電気二重層キャパシタが最も優れています。
電気二重層キャパシタの欠点
このように、メリットが多く利用の幅が広がりつつある電気二重層キャパシタですが、欠点もあるため利用には注意が必要です。
放電により出力電圧が低下する
バッテリーは一定の充電量がある場合、常に一定の電圧を出力します。しかし、電気二重層キャパシタはコンデンサと同様、充電量に比例して出力電圧が変化するため、バッテリーのようには使えないというデメリットがあります。放電時の電圧調整はもちろん、効率的な充電を行うためには電流の適切な制御が必要なので、利用の際には複雑な設計が必要です。
内部発熱が大きい
電気二重層キャパシタは内部抵抗が比較的大きいので、大電流を流すと内部発熱を起こしてしまうのが欠点です。内部発熱が大きいと電解液の寿命が短くなるほか、定格温度を超えると電解液が電気分解してガス化し、爆発する危険性もあります。
耐圧が低い
電気二重層キャパシタは、耐圧が低いのも欠点です。定格より高い電圧を与えると電気二重層が破壊されてしまうため、コンデンサとしての役割を果たさなくなります。また、電気二重層が破壊されると電極・電解液間のイオンが化学反応を起こすため、有害なガスが発生し、液漏れや爆発につながる危険性もあります。
まとめ
今回は、電気二重層キャパシタの仕組みや特徴、用途などについて解説しました。電気二重層キャパシタはコンデンサと二次電池の間の性能を持つ、特徴的なコンデンサです。バッテリーに近い大容量の充電が可能でありながら、高速な充放電が行えて寿命も非常に長いことから、次世代の大容量バッテリーの一つとして期待されています。
課題は多くまだまだ用途は限られていますが、研究も盛んに行われているため、リチウムイオン電池などを代替する存在となる可能性もあります。今後の開発状況を注視しておきましょう。
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