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  • MEMSはLSIとどう違う?半導体としての特徴や使用例とは
  • MEMSはLSIとどう違う?半導体としての特徴や使用例とは

    2024.08.08更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    機械的な構造を持ち「動く半導体」と呼ばれるMEMSのことをご存じでしょうか?スマホや自動車など、様々な電子機器になくてはならない、高機能な半導体として知られています。今回はそんなMEMSについて、従来の半導体との違いも交えながら解説していきます。ぜひ最後まで読んでみてください。

    MEMSとは

    まずは、MEMSの基礎について説明しましょう。MEMSは「Micro Electro Mechanical Systems」の略で、「微小電子機械システム」とも呼ばれる半導体の一種です。名前に機械システムと入っている通り、半導体内部に電子回路だけでなく、機械的な駆動部を兼ね備えているのが特徴です。

    センサーやアクチュエータなど、従来は外部接続していた駆動部をチップ1枚に統一できるため、スマホなどの小型デバイスにおいて欠かせない存在となっています。

    LSIとの違い

    MEMSはLSIから発展して生まれた存在であり、機能や製造方法は非常に似ているものの異なる点もあります。その違いについて詳しく解説します。

    チップ内部に駆動部を搭載できる

    まず、MEMSがLSIと最も異なる点は、センサやアクチュエータとして利用できる駆動部を搭載できることです。LSIは電気信号のやり取りしかできず、その他の入出力を得るには外部素子を接続するしかありませんでした。しかし、MEMSではチップ内部に駆動部を追加できるので、チップ単体が持つ機能をさらに拡張できます。

    MEMSを使うと今まで搭載していた部品点数を減らせるため、電子デバイスをさらに小さくできるのが強みです。また、駆動部の微細化によって消費電流を減らせるほか、配線距離の短縮による高精度化、低遅延化なども実現するため、機器の高性能化も実現できます。

    構造が立体的

    MEMSは小さなチップの内部に駆動部を入れるため、3次元配線を行い立体的な内部構造をしているのも特徴です。LSIで一般的だった2次元構造と比べると、チップサイズごとの機能をより多く盛り込めます。現在はLSIも3次元配線化が進みつつありますが、現時点ではMEMSの方がより一般的に立体構造が採用されているといえるでしょう。

    少量多品種生産だが安価

    LSIは大量生産が基本ですが、MEMSは用途に応じて駆動部の構造を変える必要があるため、少量多品種生産が一般的です。ただ、MEMSはLSIと製造プロセスや構造がほとんど一緒であり、LSIの製造設備を流用して製造できるため、少量多品種生産の割にはコストを低く保てます。

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    MEMSの使用例

    普段わたしたちが目にすることはないものの、実は身近なところでMEMSは活用されています。用途の具体例についてお伝えします。

    圧力センサ

    MEMSの最も代表的な使用例は圧力センサです。1990年ころから血圧計に使用されているほか、ガス圧計や気圧計、高度計など、多くのセンサに採用され、機器の小型化に貢献しています。圧力センサの仕組みはさまざまな種類があり、例えば小型のダイヤフラム(ゴム状の薄膜)を作り、圧力による変形を検知するといった方法があります。

    ジャイロセンサ

    物体の回転や傾きなどを検知するジャイロセンサにもMEMSが使用されています。スマホカメラの手ブレ補正や自動回転機能のために使われるのが代表例です。ジャイロセンサの検知原理は物体の回転運動時に生じるコリオリの力を利用しています。小型のMEMS素子を常時振動させておき、機器の回転に伴い振動の方向が変わったことを回転として検知します。加速度センサでは検知できないようなわずかな回転もジャイロセンサであれば測定可能です。

    光スイッチ

    光通信の分野では、MEMSを光切替スイッチとして利用することが多いです。光ファイバーの出力先を機械的に切り替えるスイッチのことで、光ファイバーの間に複数の鏡を設置し、鏡の向きをMEMS素子がコントロールして光路を切り替えます。突発的なポート故障や通信経路の最適化など、光スイッチが活躍する場面は多岐にわたるため、安定的な高速通信を実現する上で欠かせない技術となっています。

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    MEMSデバイスの製造方法

    最後に、MEMSデバイスの具体的な製造工程について説明しましょう。MEMSの製造工程は主に成膜、フォトリソグラフィ、エッチングといった前工程と、ボンディングやパッケージングなどの後工程からなります。

    前工程

    前工程は薄膜を生成する「成膜工程」から始まります。真空蒸着法やスパッタリング法などにより、シリコンウェハー上にMEMS構造物や回路配線、抵抗、絶縁層など様々な構成要素の基となる薄膜を形成していきます。次に行うのが「フォトリソグラフィ」と呼ばれる、基板上に回路パターンを転写する工程です。

    まず、薄膜の上にフォトレジスト(感光剤)を塗布します。その上から回路パターンを転写したフォトマスクを被せ、露光装置で光を照射します。フォトレジストは光が当たると硬化するので、フォトマスクに覆われていない、回路パターン部分のみ硬化した基板ができあがります。

    露光が終わったら、最後は「エッチング工程」です。ガスや薬液を使って薄膜や基板を削る工程で、フォトレジストが硬化した部分は削られず残るため、回路パターンが基板上に再現されます。これらの工程により、1層分の回路パターンが作られます。MEMSでは立体構造を作るので、エッチング後にフォトレジストを取り除き、成膜~エッチングまでを複数回行うのが普通です。

    後工程

    後工程では、前工程で出来上がった素子の接合、固定、保護などを行います。前工程が終わった時点では同パターンの素子が大量に連なった状態のため、まずはダイシングによって適切なサイズに切り分けます。その後、ボンディング(接合)工程で複数のMEMS基板を接合したり、MEMS素子を搭載するデバイスとの電気的な接合、MEMS素子の構造を固定・保護する措置を施し、最終的なMEMSデバイスが完成します。

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    まとめ

    今回はMEMSとは何かをお伝えするため、LSIとの違いを中心に、MEMSの特徴や用途などを解説しましたMEMSはセンサやアクチュエータなどの駆動部を持った集積回路です。LSIでは外部接続するしかなかった入出力機能を内蔵できるため、電子回路の小型・低コスト化や省エネルギー化、高性能化を実現できるとして注目されています。

    1990年ころに実用化が始まり、今では多くの電子機器に欠かせない存在となっていますが、まだまだ技術発展の余地は多く、開発も多数行われています。次世代産業を支える技術として、今後の進化に目が離せません。

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