トランジスタの種類と使い方を解説!
2024.08.06更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶トランジスタは、ICを始めとしたあらゆる分野の電子回路・電子部品に使われる、半導体産業の米とも言われている重要な部品です。回路設計者にとっては非常に身近な存在ですが、トランジスタの種類やそれぞれの違いが分からないという方もいるのではないでしょうか。そこで今回は、トランジスタの種類と、それぞれの特徴の違いについて解説します。
トランジスタとは
トランジスタとは、シリコンなどの半導体に不純物を投入してP型、N型半導体を作り出し、PNPまたはNPNといった形の層を作った部品のことです。トランジスタは以下の機能を持っています。
- ・信号のON/OFF(スイッチング)
- ・信号の増幅
これらの機能は、トランジスタが開発されるまでは、真空管によって実現されていました。しかし、真空管はサイズの小型化が非常に難しかったため、トランジスタが開発されたことにより、電子回路の小型化が一気に進んだのです。
今ではナノメートル単位での微細化にも成功しており、IC内部に最大で数億個のトランジスタが入っている場合もあります。
PNPトランジスタとNPNトランジスタの使い方
トランジスタは、PN接合の組合せ方によってPNP型とNPN型に分かれていますが、それぞれで使い方が異なります。
P型(PNP)トランジスタ
PNPトランジスタは、コレクタ-ゲート間の電圧や電流がスイッチとなり、一定の電圧・電流を超えるとコレクタ-エミッタ間に電流が流れ出す構造のトランジスタです。安定してスイッチングを行うため、コレクタ端子は電源に直接接続されるのが一般的で、負荷はエミッタ側に接地する形で接続されます。
トランジスタがONすると、エミッタ端子は電源電圧に引き上げられるので、トランジスタから負荷に電流が流れ込む形となります。
N型(NPN)トランジスタ
NPNトランジスタは、ゲート-エミッタの電圧・電流をスイッチとして、コレクタ-エミッタ感に電流を流すトランジスタです。動作を安定させるため、エミッタ側はGNDに直結しており、負荷はコレクタ側に接続します。
トランジスタがONすると、コレクタ端子もGNDに接地するため、電流は負荷からトランジスタに向けて引き込む形で流れます。
トランジスタの構造による種類
トランジスタにはさまざまな構造の製品が開発されていますが、現在はバイポーラトランジスタ、FET、IGBTの3種類を用いるのが一般的です。それぞれの特徴について解説します。
バイポーラトランジスタ
バイポーラトランジスタは、最初に普及したトランジスタです。最も知名度が高く、単純にトランジスタと呼ばれる時は、多くの場合バイポーラトランジスタのことを指します。
N型もしくはP型のゲート層を薄く形成し、対となる半導体で挟んだ構造をしているのが特徴です。コレクタ-エミッタ間は通常NP構造により電流が流れませんが、ゲートに電流が流れ出すと、電流により加速した電荷がゲート層の半導体を突き抜けるようになり、コレクタ-エミッタ間が導通するようになります。
トランジスタとしては増幅率が高く、耐圧を高めやすいといったメリットがあります。
接合型電界効果トランジスタ(JFET)
バイポーラトランジスタのような電流駆動ではなく、電圧駆動によって動くトランジスタのことを電界効果トランジスタ(FET)といいますが、JFETはその中でも最も簡単な構造をしたトランジスタです。バイポーラトランジスタと異なり、ゲート電圧に反比例して出力電流を抑制できるのが特徴です。
N型半導体の両端にドレイン-ソース端子を繋ぎ、これらの端子間の端にP型半導体とゲート端子を繋いだ構造をしています。通常はP型半導体は影響を与えず、ドレイン-ソースの端子間電圧に比例して電流が流れますが、ゲート電圧が印加されると、ゲート端子に近いN型半導体に空乏層が広がるため、電流は空乏層によって阻害されて低下するのです。
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)
MOSFETは、その優れた特性からFETの中でも最も利用されているトランジスタです。バイポーラトランジスタと同様にPNP、NPN構造をしていますが、ゲート端子は絶縁されており、電流は流れません。
この状態でゲートに電圧が印加すると、電界によりゲート近傍のNP構造上に空乏層が生まれるため、空乏層を通り抜けて電流が流れるようになります。空乏層の面積に比例して流れる電流も増えるので、ゲート電圧を変動させて電流を制御することが可能です。
ちなみに、MOSFETにはエンハンスメント型、デプレッション型という種類に分かれています。一般的に使われるのは、ゲート電圧をかけることで出力電流が流れるようになるエンハンスメント型の方ですが、ゲート電圧により出力電流を抑制するデプレッション型も普及しています。
絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)
IGBTはバイポーラトランジスタとFETを複合させた機能を持つトランジスタです。エンハンスメント型のMOSFETのドレイン端子側に、n型ならp型層を、p型ならn型層を追加した構造をしています。
追加された層とMOSFETの一部の層によってバイポーラトランジスタが形成されるため、等価回路はMOSFETとバイポーラトランジスタを接続したものとなります。n型なら、コレクタに電源が繋がり、ドレインにベース端子が、ソースにエミッタ端子が接続された回路と等価です。
このような回路から、電圧駆動ながらもMOSFETのようなオン抵抗の増加がなく、特性劣化が少ないことから、高電圧電源の制御として多用されています。
バイポーラトランジスタによる飽和電圧が存在するため、約300V以下ではMOSFETの方が特性が良いこと、また2段のスイッチ構造なのでオン時間が遅くなるデメリットもあるため、使う際は注意しておきましょう。
出力による種類
トランジスタは、構造による違い以外にも、扱う電力によって呼び方が変わります。
小信号用トランジスタ
一般的なトランジスタのことです。明確な規定はありませんが、一般的にはコレクタ損失が1W以下となる出力を扱う用のトランジスタを指しています。
熱損失に応じて適したパッケージサイズは変わるので、トランジスタに流れる電力から損失を計算し、型式を選ぶのが重要です。信号用など、電流がほとんど流れない部品については微細化が非常に進んでおり、IC内部にはナノメートルサイズのトランジスタも使われています。
パワートランジスタ
明確な規定はありませんが、コレクタ損失が1W以上の場合に使えるトランジスタを一般的にパワートランジスタと呼びます。損失に応じてトランジスタ内部で生じる熱が増えるため、部品サイズを大きくし、放熱板を追加して耐熱性を向上させていることが多いです。
また、耐圧を上げるために内部の半導体構造を厚くするなどの工夫も行われていますが、その分スイッチング速度やオン抵抗が悪化している場合が多いです。
最近は、通常のパワートランジスタが持つ損失の大きさ・性能の劣化を改善するため、SiCなどのパワー半導体を使ったトランジスタが使われるようになっています。
パワー半導体は、SiCやGaNなど、高電圧領域で優れた特性を示す半導体のことであり、歴史が浅く発展途上なことから、パワートランジスタの高効率化はこれから発展していくことが想定されています。
その他の種類
ここまでの一般的なトランジスタの種類とは別に、一部の特殊なトランジスタも種類分けが行われています。その代表的な種類について解説します。
デジタルトランジスタ
デジタルトランジスタは、バイポーラトランジスタのゲート端子-ゲート間、ならびにゲート端子-エミッタ間に抵抗を入れたトランジスタのことです。これらの抵抗は、ゲート端子を電源に直接接続した際、動作を安定させ誤動作を防ぐ効果があります。そのため、デジタルトランジスタはICの信号出力に接続するトランジスタとして多用されます。
ちなみに、ゲート端子-ゲート間の抵抗は、IC出力に直接接続した際に動作が不安定になるのを防ぎ、ゲート端子-エミッタ間の抵抗は、IC出力からリーク電流が流れた場合に電流を逃がし、誤動作するのを防ぐためにあります。
フォトトランジスタ
フォトトランジスタは、受光素子に当たった光を電気信号に変換して出力する部品です。フォトダイオードを、NPN型バイポーラトランジスタのゲート-コレクタ間に接続した回路と等価です。
フォトダイオードと比べると、光により発生した電流が増幅されるため、感度が向上しますが、その分応答速度は遅くなるデメリットも持っています。光センサーとして使うほか、ゲート端子への出力を完全に絶縁したい場合に用いられます。
ダーリントントランジスタ
ダーリントントランジスタは、トランジスタを2段に重ねることで、増幅率を向上させた電子部品です。2つのトランジスタは、エミッタ-ゲート間で接続されており、1つ目のトランジスタで増幅されたエミッタ電流が2つ目のゲートに流れ、hFE1×hFE2という大きな増幅率となります。
このような構造のため、ダーリントントランジスタの使い方は、通常のバイポーラトランジスタと同様です。トランジスタ1個では増幅率が足りない、大電流を流したい場合に用います。
まとめ
今回は、トランジスタの主な種類とその特徴について解説しました。トランジスタは、その構造からバイポーラトランジスタ、FET、IGBTに分類されます。
他にもさまざまな分類が行われますが、基本的には耐圧、オン抵抗、スイッチング時間などの特性に違いがあり、使い分けるために開発されたものがほとんどです。それぞれのトランジスタの特徴を理解し、最適なものを選定するようにしましょう。
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