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  • 燃料電池車(FCV)の仕組みとは|水素に対する安全対策手法も紹介
  • 燃料電池車(FCV)の仕組みとは|水素に対する安全対策手法も紹介

    2024.08.06更新

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    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    次世代自動車として注目を集めている燃料電池自動車(FCV)。水素で動く自動車というのはよく聞きますが、詳しい仕組みが気になる方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、燃料電池自動車の仕組みや特徴、安全性への対策などを詳しくお伝えします。

    燃料電池自動車(FCV)の仕組み

    燃料電池自動車はその名前の通り、燃料電池を使って動く自動車のことです。燃料電池は、水素と酸素を反応させ、水になる際に生じるエネルギーを電力として取り出す装置で、燃料電池車ではエンジンの代わりに搭載されています。

    水素はタンクから、酸素は空気を取り込んで燃料電池内で発電。反応後の水はマフラーから排出される仕組みです。燃料電池によって作り出された電力はモーターに送られ、動力に変換されます。また、小さなバッテリーも搭載されており、電力の一部や回生ブレーキで発生した電力を貯めて発進時に使用します。

    燃料電池の仕組みと特徴

    FCVの核となるのは燃料電池ですが、燃料電池にもいくつかの種類があり、それぞれで仕組みや用途は異なります。ここでは、FCVで用いられている「固体高分子型燃料電池(PEFC)」について、仕組みや特徴をお伝えします。

    燃料電池の仕組み

    まず前提として、燃料電池の仕組みを解説しましょう。燃料電池は、一般的な電池と同様に電極が取り付けられています。電池は、電解質のイオン化と移動によって、電子を負極から陽極に動かして電流を生み出しますが、燃料電池では、電解質の代わりに負極に水素、陽極に酸素を流すことで反応を起こすのです。

    電極でイオン化した水素または酸素が、もう一つの電極に移動することで電流を発生させ、さらに水素と酸素が結合することで水を廃棄物として生み出します。

    このように、燃料電池の仕組みは電池と同じであり、エンジンのように燃料を燃やすことはなく、直接化学反応を電気に変換しています。なお、燃料電池の種類は、移動するイオンの種類やイオンを運ぶ電解質、セパレーターなどの構造の違いによって分類されます。

    固体高分子型燃料電池(PEFC)の仕組み

    それでは、燃料電池車やエネファームなど、身近で使われる固体高分子型燃料電池(PEFC)の仕組みを解説しましょう。固体高分子型燃料電池(PEFC=polymer electrolyte fuel cell)は、電解質に高分子膜を使用した燃料電池です。高分子膜は水素イオンを通すため、プロトン交換膜燃料電池とも呼ばれています。

    まず、燃料電池に入ってきた水素は、白金の触媒によって負極で電子と水素イオン(H+)に分離されます。水素によって生じた電子は、回路を通って陽極に流れ、陽極にいる酸素が電子を受け取って酸素イオン(O2-)にイオン化します。一方、水素イオンは電解質層を通って陽極に流れていくため、水素イオンと酸素イオンは陽極で合成され、水が生成します。

    PEFCは、高分子膜の両面に、白金を薄く塗布した炭素陽極・負極を貼り付けたもの(膜・電極接合体=MEA)をベースとし、さらに両面からセパレータで包むのが基本的な構造です。この構造を基本単位(単セル)とし、セパレータとMEAの間に水素と酸素を流して発電します。

    単セルでは発電力が低く、電圧が1V未満にしかならないため、セルを多数積層させて高電圧の出力を行うのが一般的です。積層されたセルのことはセルスタックと呼びます。

    固体高分子型燃料電池(PEFC)の特徴

    PEFC以外にも高効率な燃料電池は複数ありますが、現状のところ、燃料電池車ではPEFCのみが用いられています。その理由は、室温で駆動できることや、セルが小型・軽量なこと、小型化しても発電効率が下がりにくいことが挙げられます。

    ただ、高温で動作する固体酸化物型燃料電池(SOFC)などと比べると発電効率は低く、現状では30%程度です。他にも触媒としてプラチナを使わなければならず、資源上の制約やコスト増に繋がっているなど、解決すべき問題は多いため、PEFCの開発は継続して進められています。

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    水素を使うのは危険か

    水素は可燃性だがガソリンと同程度の危険しかない

    まず、「水素は危険」というイメージは強いものの、実際はガソリンが持つ危険性と同程度であり、適切に扱えば特段の危険性はありません。まず、水素の燃焼温度は527℃で、ガソリンの300℃よりも高いです。

    また水素は非常に軽いので、仮にタンクから漏れた場合でも大気中に拡散していくため、着火しにくく消火も早いという特徴があります。水素タンクから出る水素に火が付いた場合でも、拡散が速いため、炎がタンク内には入らず、タンクが爆発することはありません。

    このように、火災や爆発につながる可能性こそあるものの、対策を行えば危険性はほとんど排除でき安全に使えることから、ガソリンと同程度の危険性だと言えます。

    高圧の場合はタンクに浸透する

    ただし、水素を高圧に凝縮した場合に限り、タンクなどに水素が浸透して漏れてしまうという、ガソリンには無い問題も発生します。これは、水素分子が非常に小さいことが原因で、ステンレス製など、ガソリン車や都市ガスなどで使っているタンクでは水素が漏れるのを防げません。

    水素の圧力自体に耐える必要もあるため、特殊なステンレスや樹脂などを用いて、燃料電池専用のタンクを設計する必要があります。

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    燃料電池車の安全性への取り組み

    水素はイメージほど危険ではありませんが、一定の条件下で発火・爆発する危険はあるため、各車メーカーでは安全性に配慮した設計を行っています。ここでは、トヨタが公表している内容を例に、燃料電池車の安全対策について解説します。

    水素を漏らさない工夫

    まず、水素を貯めておくタンクについては、高圧水素を通さない樹脂を内側にして、ガラス繊維や炭素繊維によって強化したプラスチックを使用することで、重量やサイズを抑えつつ、安全性を確保しています。

    タンク自体も強度が高いうえ、座席の後ろや下など、衝突しても影響を受けづらい場所に配置されているため、外力による漏れを抑えています。

    水素を検知する工夫

    万が一水素の漏れが発生した場合、それを検知してバルブをシャットダウンし、漏れを止める機能も搭載されています。まず車の後方、水素タンクの上部と、車の前方の2カ所に水素センサーを配置し、水素の漏れを検知します。さらに加速度センサーを設置し、車の衝突を検知することで、水素が漏れる前の対策も十分です。

    また、万が一の衝突により、火災などで水素タンクに熱が掛かる場合は、水素がタンク内で膨張し、爆発する危険性がありますが、その対策として溶栓弁が取り付けられています。

    溶栓弁は、一定の温度になると溶けるバルブのことで、溶栓弁から水素が漏れることで爆発を防ぐのです。溶栓弁は車の後方、地面方向に向いており、放出された水素が燃えた場合でも、車体や乗員への影響を最小限に抑える工夫が行われています。

    漏れても溜めない工夫

    さらに、水素の漏れを止められなかった場合でも、水素が1カ所に溜まらず、車体から拡散していくような設計も行われています。特に車室内部に入らないよう工夫されており、水素は車体の隙間から大気中に抜けていきます。

    なお、水素が存在する近くには火種となる部品を配置しないことも重要で、車体構造の設計には創意工夫が凝らされています。

    水素ステーションの安全対策も充実

    燃料電池車だけでなく、水素ステーションにおいても、同様の安全対策が行われています。水素センサーによる漏れ検知を始め、天井を無くし水素が溜まらないようにする建物形状、地震などの異常を検知し緊急停止する機構など、万が一の状況にも対応しています。

    水素の充填自体もガソリン車と同様の方法で、特段の危険もないため、安心して充填が可能です。

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    まとめ

    今回は、燃料電池車の仕組みに焦点を当て、心臓部となる燃料電池の原理や、安全対策について解説しました。燃料電池車は、水素と酸素の化学反応を使って電気を生み出し、走行する自動車です。

    室温で動作し、小型・軽量さが特徴の固体高分子型燃料電池が使われていますが、発電効率やコストに課題があります。しかし、課題解決に向けた開発は産学連携で進んでいるため、技術革新による性能向上が実現する日は近いかもしれません。

    本記事では燃料電池車の原理についてお伝えしましたが、ガソリン車や電気自動車と比較した際のメリット・デメリットや、将来性について気になる方は「FCV(燃料電池自動車)はEVとどう違う?将来性についても紹介」をご覧ください。

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