LED照明の寿命はどのくらい?故障モードについても解説
2024.08.07更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶近年一般的になってきたLED照明。消費電力の小ささと寿命の長さが特徴ですが、実際にどの程度壊れずに動き続けるのでしょうか。今回は、LEDの寿命と壊れる原因について解説します。
LEDとは
まず前提として、LEDの仕組みを解説しましょう。LEDは「発光ダイオード(Light-Emitting Diode)」を意味し、電流を流すと発光する半導体を使った製品のことです。半導体の構造は一般的なダイオードと同様、PN接合となっています。順電流を流すとPN接合間で電子と正孔が結合し、その際に生じる光を活用するのが基本的な原理です。
とはいえ、一つ一つの半導体は小さく光量も少ないので、照明用のLEDでは半導体を大量に並べることで、一定の光量を確保しています。また、生じる光の波長は半導体のバンドギャップによって決まるため、様々な半導体材料を使った製品が開発されており、今では幅広い色の光を得られるようになっています。
LED照明の白色光は、赤・青・緑色のLEDを組み合わせるのが基本ですが、青色LEDだけを使い、黄色の蛍光体を電球に貼り付けて白い光を作り出している場合も多いです。
LEDの寿命は約10年
続いて、本題であるLEDの寿命について解説しましょう。現在では、ほとんどのLED照明において、40,000時間が寿命だと定められています。40,000時間稼働するということは、照明を1日10時間使った場合でも、40000÷10時間÷365日=10.9年となり、約10年使えることを指します。
ただし、LEDについては開発されたのが2009年頃であり、市場に出ているLEDのほとんどは使用されてから10年経過していません。加速試験などにより検証は十分行われているものの、市場における実証は行われていないため、実際の耐用年数は変わる可能性があると言えます。ちなみに、寿命が40,000時間あるLED照明の場合、保証期間は5年と定められていることが多いです。そのため、何らかの原因で寿命が短くなった場合でも、最低5年間は動作が保証されているといえるでしょう。
LEDの寿命が長い理由
LEDの寿命は40,000時間とお伝えしましたが、他の照明器具の寿命とはどの程度差があるのでしょうか。主な照明器具である白熱電球、蛍光灯、LEDそれぞれの一般的な寿命は以下の表のとおりです。
照明の種類 | 寿命 |
---|---|
白熱電球 | 1,000~2,000時間 |
蛍光灯 | 6,000~12,000時間 |
LED | 40,000時間 |
白熱電球や蛍光灯と比較すると、LEDの寿命の長さが際立つのではないでしょうか。それでは、LEDの寿命が長くなる理由を、各照明器具が故障するメカニズムから明らかにしていきましょう。
白熱電球はフィラメントが焼き切れる
まず、白熱電球の場合は、内部のフィラメントが焼き切れることで寿命を迎えます。白熱電球はフィラメントに電流を流して加熱、白熱化させることで光を生み出すのが原理です。フィラメントは非常に高温になるため、どうしても少しずつ蒸発して消耗していき、一定の消耗度合を超えると断線して使えなくなります。また、スイッチON時が最もフィラメントに負荷がかかるため、電球のON/OFFを繰り返すと寿命が短くなるといわれています。
ちなみに、フィラメントをより太くすれば寿命を伸ばすことも可能ですが、その分光量が下がってしまうという理由から、2,000時間以上の製品は販売されていません。
蛍光灯は電極が断線する
蛍光灯の場合は、両端にある電極が劣化し、電子を放出できなくなるのが寿命の原因です。蛍光灯が光を発する原理は少し複雑なので、順を追って説明しましょう。まず、電極に高電圧をかけて熱電子を飛ばすのが動作の始まりです。飛んだ熱電子は蛍光灯内に満たされた水銀粒子に当たりますが、その際に紫外線が生じます。生じた紫外線は蛍光灯の表面に塗った蛍光体で可視光線に変換されることで、照明としての効果を生み出します。
このように、蛍光灯は白熱電球とは異なり、高温となる部品がありません。しかし一方で、電極に高電圧をかける必要があることから、蛍光灯をONするごとに電極への負荷がかかります。特に熱電子を放出しやすくするために塗布される「エミッタ」が少しずつ減っていくため、一定時間が経つと熱電子が放出されなくなり、寿命を迎えるのです。寿命に近づいてきた蛍光灯において、表面の一部に黒ずみが生じているのも見たことがある方は多いと思いますが、これはエミッタが飛び散ったことで生じています。
LEDは破損する部品がない
LEDの場合は、半導体の電子・正孔が結合する際の発光を利用します。そのため、装置はほとんど半導体と電流を流すための部品のみで構成されており、発光時に最も負荷がかかるのは半導体です。ただ、個々の半導体に流す電流は大きくはなく、適切に使った場合は半永久的といって良いほど長い寿命を誇るため、白熱電球のように壊れることはありません。また、他に高温・高電圧などの過酷な環境にさらされる部品もないため、総じて寿命が長くなるのです。
ちなみに、半導体が高温になるなど、条件によっては寿命が短くなる可能性もありますが、ほとんどの場合は適切に対策が行われているため、心配する必要はありません。
LEDの寿命は「明るさの劣化」で決まる
ここまでのように、LEDは白熱電球や蛍光灯と違い破損する部品がなく、半導体は半永久的に動き続けます。しかし、保護用として使っている樹脂や蛍光体は劣化して光を阻害するようになるため、LEDの光量は少しずつ減っていくのが現実です。LEDの光量が減ってしまうと使用できなくなるので、(社)日本照明器具工業会の規格にて「光量が当初の70%を切るまでの時間を寿命とする」ことが定められ、LED製品の寿命として認知されるようになりました。
ちなみに、LEDが登場した当初はエポキシ樹脂が保護剤として使われていました。しかし、光量が減るまでの寿命が短かったため、現在は劣化に強いシリコーン樹脂に置き換えることで40,000時間という寿命を実現しています。今後、より寿命が長い樹脂が見つかることがあれば、LEDの寿命はさらに伸びるかもしれません。
LEDが故障する原因
LEDは少しずつ光量が劣化して寿命を迎えるのが一般的ですが、例外的に他の部分が破損することにより、LED自体が点灯しなくなる可能性はあります。主に考えられる故障モードについて紹介します。
基板の故障
安定した光を出すため、LEDには適切に制御された直流電圧を入れることが必要です。電源は商用100Vを使う場合がほとんどなので、内部にLEDドライバーを入れてLEDに最適な電圧・電流を作り出しています。LEDドライバーなどの電子回路も基本的には寿命が長いですが、電子部品は経年劣化により一定確率で破損することは避けられません。急にLEDが点灯しなくなった場合は、電子回路の破損を疑いましょう。
高温によるLEDの破損
LEDは長時間発光し続けるため、かなりの熱を発生させます。通常は一定以上の高温にならないよう設計されていますが、安価な製品などで放熱計算が甘い場合は、半導体や電子部品、樹脂などの寿命が急速に短くなります。40,000時間よりも明らかに短い時間でLEDが暗くなってしまう場合は、放熱計算が適切に行われていない可能性が高いでしょう。
まとめ
今回は、LEDの寿命の長さと、故障の原因について解説しました。LEDは白熱電球や蛍光灯と異なり、過酷な条件で使われる部品がないため、40,000時間という長寿命を誇ります。また、急に照明がつかなくなることも少なく、少しずつ明るさが減っていく場合がほとんどです。とはいえ、LED自体ではなく、電源供給用の基板が壊れるなど、別の理由で破損する可能性もあります。
5年以内であれば保証期間内であることが多いので、あまりに早く明るさが下がるようであれば、問い合わせるようにしてください。
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