フォトカプラとは?原理や特徴、用途などの基本をわかりやすく解説!
2024.08.07更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶電子回路において、回路を絶縁するために重要な役割を果たすフォトカプラ。本記事では、フォトカプラの基礎的な原理や特徴、用途が気になる方に向けて、分かりやすく解説していきます。
フォトカプラの概要
フォトカプラとは、発光ダイオードなどの発光素子とフォトトランジスタなどの受光素子を組合せ、一つのパッケージに封入した製品のことです。パッケージにより外部の光は入らず、発光素子の出力に応じて受光素子のスイッチがON/OFFするため、光を使ったスイッチング素子として用いられます。
発光素子と受光素子は物理的に離れているため、スイッチの信号側と出力側を絶縁したい時に用いられます。発光素子にはほとんどの場合LEDを使いますが、受光素子には複数の選択肢があります。それぞれで特性が変わるので、注意して選定しましょう。
フォトカプラの種類
フォトカプラの種類は、受光素子側の部品による分類が主となります。それぞれの特徴の違いについて解説します。
トランジスタ出力
最も一般的なのが、フォトトランジスタを出力側に用いる方式です。最初に登場したフォトカプラであり、安価に購入できることから今でも数多くの回路で採用されています。フォトトランジスタは応答速度が遅く、耐圧性能もそこまで高くないですが、一般的な用途であれば十分な性能を有しています。
IC出力
受光素子と後段の出力回路を集積回路で構築する方式です。通常のフォトカプラと比べて圧倒的に遅延が短く、数十MHz帯の高周波信号を伝送できるのが特徴です。高周波のロジック信号伝送用、IGBTなどのゲート信号用プリドライバー、アイソレーションアンプ、電流・電圧フィードバックなどの用途を目的とした製品があります。
サイリスタ(トライアック)出力
出力側にサイリスタ(トライアック)を用いた方式です。耐圧性能の高さが特徴で、100V、200Vの家庭用・商用交流電源にモーターやソレノイドを直接接続する際、スイッチ素子として主に用いられます。トライアックカプラ単体では流せる電流に限界があるため、数アンペアの大電流を流す回路ではフォトカプラの外部にトライアックを追加して使うことが多いです。
フォトリレー(MOSFET)出力
出力端子にフォトリレーを使った方式のフォトカプラです。フォトリレーは機械式のリレーの代替として使われている部品であり、寿命の長さが特徴です。また、スイッチ動作にMOSFETを用いるため、応答速度が速いといったメリットもあります。
フォトカプラの特徴・メリット
続いて、フォトカプラの持つ特徴・メリットについて解説します。
入力/出力間の回路を絶縁できる
フォトカプラの最も大きな特徴は、光を使って信号を伝送するため、回路を電気的に絶縁できることです。入力側と出力側の回路を切り離して設計できるので、電源電圧やGNDが異なる回路において、簡単に信号を伝送させることが可能となります。
また、入出力回路は物理的に距離が離れており耐圧性能が高いため、感電からの保護など、安全対策への活用も可能です。安全を確保するための国際規格も複数制定されているため、安心して使用できるでしょう。
出力電圧のレベル変換が可能
入出力間の絶縁が保たれると、入力と出力で異なる電源電圧を使えるため、出力の電圧レベルを変更したい時にも使えます。応答速度は遅めなので高速信号には不向きですが、簡単にレベル変換できるので使い勝手は良いでしょう。
ノイズを遮断できる
マイコンの出力をモーターなどの負荷に接続して制御する回路を組むと、負荷側で生じたノイズがマイコンに逆流し、誤動作の原因となることがあります。フォトカプラを間に入れれば信号・GNDを絶縁できるため、ノイズの影響もシャットアウトでき、誤動作の防止につながります。同様に、入力側でコモンモードノイズが入る場合にも、その影響を排除できます。
寿命が長い
フォトカプラは機械的な駆動部分がないため、摩耗による破損は生じません。また、構造も非常に単純であり、外力などによる破損の可能性も低いです。発光素子であるLEDの出力は経年劣化するため一定の寿命はありますが、総じて寿命は長く安定した性能を保ち続けます。
フォトカプラの用途
フォトカプラは歴史が古く、さまざまな回路で用いられていますが、主にどのような用途で用いられているか解説します。
スイッチング電源
スイッチング電源では、1次側と2次側をトランスなどで絶縁していることが多いですが、出力制御を行うために、別途電圧フィードバック用の回路の設計が必要です。フォトカプラは、このフィードバック回路の絶縁用として非常によく用いられています。
医療用機器
医療用機器では、患者に接触する部位から人体への感電を防止するため、商用電源との絶縁を行っています。その絶縁対策として、安全規格をクリアしたフォトカプラが使われます。
FA向けコントローラ
FA(ファクトリーオートメーション)では、PLCにさまざまな負荷を接続して制御を行いますが、負荷は動作時にさまざまなノイズを発生させるため、逆流したノイズがPLCに悪影響を及ぼす可能性が高いです。そのため、信号のアイソレータとしてフォトカプラが用いられ、負荷側からのノイズを遮断しています。
フォトカプラの選び方・注意点
続いて、フォトカプラを選定する際に重視すべきポイントと、使用上の注意点について解説します。
変換効率CTR
CTRとは、入力電流に対する出力電流の増幅率のことを指します。バイポーラトランジスタのhFEと同じであり、出力電流の限界が決まるため、フォトカプラの性能において特に重要な特性です。CTRが足りない場合は追加で増幅回路を設計するか、ダーリントン接続を行ったフォトカプラを使用すれば解決できます。
トリガLED電流
トリガLED電流とは、出力のON/OFFを切り替えるために必要な、最低源の入力電流値のことです。安定した動作をさせるためには、入力電流をトリガLED電流より必ず大きくする必要があります。誤動作の原因となるため、マイコンなど、ドライブ能力が低く出力電流が小さい部品を、信号入力に使う場合は注意しましょう。
出力方式の違い
フォトカプラは、ノーマリーオン、ノーマリーオフどちらの出力方式も製品化されているので、間違えないよう選定しましょう。ノーマリーオンは電源OFF時に出力がON、ノーマリーオフは電源ON時に出力がONする形式です。
最大電流の限界
CTRの範囲内に収まっていても、内部回路の限界により、出力電流は定格が決まっています。数十mA程度となる場合がほとんどなので、負荷を直接接続するには向いていません。また、大電流を流して部品温度が上昇すると、CTRが悪化することにも注意しましょう。
応答速度は速くない
フォトカプラは、受光素子の応答速度に限界があるため、フォトダイオードなどと比べると応答速度は遅くなる傾向があります。増幅回路を増設し応答速度を上げた製品もありますが、高速伝送が必要な回路の場合は注意が必要です。
LEDの経年劣化に注意
フォトトランジスタは、機械的な駆動部分がないため寿命は長いですが、LEDは表面の汚れなどにより、発光量の劣化が生じます。入力電流値に応じて劣化の速度は変化するので、十分な寿命を保てるよう、電流値を一定以下に抑えなければなりません。機械的な寿命とは異なる形で性能が劣化するため注意しましょう。
まとめ
今回は、フォトカプラの簡単な原理や特徴、メリットなどを解説しました。フォトカプラは光を使い、入力側と出力側の距離を物理的に離すことで、回路の絶縁を行う電子部品です。簡単に絶縁やノイズの除去、感電に対する安全対策が行えることが特徴ですが、選定する際にはCTRやトリガLED電流などに注意して製品を選ぶようにしましょう。
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