レベルシフタとは?設計時のポイントを技術者向けに解説
2026年9月25日更新
この記事を書いた人

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。
レベルシフタとは、異なる電源電圧で動作するICや回路の間で信号をやり取りするために使用する回路やICのことです。本記事では、レベルシフタの特徴や種類と合わせて、設計時に確認すべきポイントを技術者向けに解説します。
レベルシフタとは

レベルシフタとは、異なる電圧レベルで動作する回路間で信号をやり取りするために、信号の電圧レベルを変換する回路です。例えば、3.3Vで動作するマイコンと5Vで動作する周辺ICを接続する場合、マイコンから出力される3.3Vの信号を5V系の信号に変換したり、5V系のICから出力される信号を3.3V系の信号に変換したりするために使用します。
このように、レベルシフタは、電源電圧の異なるICや回路の間で信号を接続できるようにする役割を持っています。レベルシフタには、一方向の信号を変換するものや双方向の信号に対応するものなどがあり、GPIOやSPI、I²Cなどの各種インターフェースで使用されています。
レベルシフタの種類

レベルシフタは、信号の方向や方式などによっていくつかの種類に分けられます。
一方向型
一方向型は、信号の方向が入力側から出力側に固定されたレベルシフタです。内部では、バッファやトランジスタなどを利用して入力信号を受け取り、異なる電圧レベルの信号として出力します。
信号の方向が固定されているため、比較的シンプルな構成で、高速な信号に対応しやすいのが特徴です。マイコンから周辺ICへのGPIOやSPIなど、一方向に信号を送る用途で使用されます。
双方向型
双方向型は、信号を一方から他方へ送るだけでなく、反対方向にも信号を伝送できるレベルシフタです。製品によって、方向制御信号によって切り替える方式や、信号の状態を検出して方向を切り替える方式などがあります。
マイコン間のGPIO接続や、双方向のデータ通信を行うインターフェースなどで使用されます。ただし、双方向に対応していても、対応する信号方式や方向制御方法は製品によって異なります。
オープンドレイン対応型
オープンドレイン対応型は、オープンドレイン方式の信号を電圧変換するためのレベルシフタです。内部ではMOSFETなどを利用して、両側の信号レベルを変換します。
オープンドレイン信号では、各電圧側に接続したプルアップ抵抗によってHighレベルを作る構成が一般的です。そのため、通常のプッシュプル信号用のレベルシフタとは異なる回路構成が必要になります。I²Cなど、複数のデバイスで信号線を共有する通信に使用されます。
レベルシフタを設計・選定する際のポイント

レベルシフタは、対応する電源電圧だけを見て選定すると、通信速度や信号方式などの条件が合わず、正常に動作しない可能性があります。ここでは、実際の回路設計で確認したいポイントを解説します。
入出力の電圧仕様を確認する
まず確認したいのが、レベルシフタの電源電圧と入出力電圧の仕様です。例えば、1.8Vと3.3Vの信号を変換する場合、1.8V側と3.3V側の両方に対応したレベルシフタを選択する必要があります。
また、入力電圧範囲や出力電圧の確認も重要です。特に確認したいのが、High/Lowの入力しきい値です。受信側ICのVIHが高い場合、レベルシフタの出力電圧が十分なマージンを持ってVIHを上回る必要があります。
例えば、受信側のVIHが2.0Vであれば、3.3Vの信号はHighとして認識できます。一方で、出力電圧が電源電圧に近づかない条件や負荷によって電圧が低下する条件では、十分なノイズマージンを確保できない可能性があります。
信号方式と方向を確認する
レベルシフタを選定するときは、信号がどのような方式で伝送されるかも確認します。例えば、一般的なGPIOやSPIなどでは、HighとLowを能動的に出力するプッシュプル方式が使用されます。一方、I²Cでは信号線をLowに引き下げるオープンドレイン方式が使用されます。この違いによって、適したレベル変換回路も変わります。
また、UARTのTX/RXのように基本的に信号方向が決まっているインターフェースと、I²Cのように同じ信号線を複数のデバイスが共有するインターフェースでは、必要なレベルシフタの構成が異なります。
特に「双方向対応」と記載されたレベルシフタでも、任意の信号を双方向に変換できるとは限りません。オープンドレイン信号を前提とした製品や、自動方向検出を行う製品などがあるため、対象となる通信方式とレベルシフタの仕様が合っているか確認する必要があります。
通信速度とタイミングを確認する
レベルシフタを使用すると、信号は内部回路を通過するため、伝搬遅延が発生します。低速なGPIOなどでは問題にならなくても、高速な通信インターフェースでは、レベルシフタによる遅延がタイミングマージンに影響する可能性があります。
また、立ち上がり時間や立ち下がり時間も重要です。出力ドライブ能力が不足していたり、接続する配線や入力端子の容量が大きかったりすると、信号のエッジが鈍り、受信側で正しいタイミングにHighまたはLowを判定できなくなることがあります。
そのため、最大データレートだけでなく、伝搬遅延、立ち上がり時間、立ち下がり時間などをデータシートで確認します。特にSPIやクロック信号などの高速信号では、レベルシフタを追加したことによってタイミングマージンがどの程度変化するかを確認することが重要です。
出力ドライブ能力を確認する
レベルシフタの出力端子に接続される負荷も確認する必要があります。接続先ICの入力容量やPCB配線の容量が大きい場合、出力側のインピーダンスとの組み合わせによって、信号の立ち上がり・立ち下がりが遅くなることがあります。
特に、複数のICを1本の信号線に接続する場合や、配線が長い場合は負荷容量が増加しやすくなります。そのため、想定される負荷に対して、レベルシフタが必要な信号速度に対応できるか確認することが重要です。
電源投入・遮断時の動作を確認する
レベルシフタでは、片側の電源がOFFになっている状態で、もう一方の側から信号が入力されるケースにも注意が必要です。製品によっては、信号端子から電流が流れ込んで電源OFF側の電圧が意図せず上昇し、誤動作や想定外の消費電流につながることがあります。
そのため、電源投入・遮断のシーケンスがある機器や、外部から信号が入力される回路では、電源OFF時のI/O端子の状態や入力耐圧、電源シーケンスに関する仕様を確認することが重要です。
レベルシフタ以外の方法も検討する
電圧レベルを合わせるのに、必ずしもレベルシフタを使用する必要はありません。信号の速度や方向、接続するICの入力仕様などによっては、抵抗分圧回路やトランジスタ、MOSFET、ロジックICなどを利用して対応できる場合があります。
例えば、低速の一方向信号を5Vから3.3Vへ変換する場合は、抵抗分圧回路が比較的シンプルな方法です。一方、双方向信号やI²Cなどのオープンドレイン信号では、MOSFETを利用した回路が使われることがあります。
また、高速信号では、電圧レベルだけでなく信号の遅延や波形、ドライブ能力なども考慮して、レベル変換機能を持つロジックICなどを選択する方法もあります。このように、「電圧が違うからレベルシフタを使う」と決めるのではなく、信号の仕様に応じて適切な方法を選ぶことが重要です。
まとめ
レベルシフタは、電源電圧の異なるICや回路の間で信号をやり取りするために、信号の電圧レベルを変換する回路です。一方向型や双方向型、オープンドレイン対応型などがあり、信号の方向や方式によって内部の回路構成や適した用途が異なります。
レベルシフタを設計・選定する際は、入出力の電圧仕様だけでなく、信号方式や方向、通信速度、タイミング、出力ドライブ能力、接続先の負荷などを確認する必要があります。また、電源の投入・遮断時における信号の状態にも注意が必要です。
さらに、用途によっては抵抗分圧回路やMOSFET、ロジックICなど、レベルシフタ以外の方法で対応できる場合もあります。そのため、回路の電圧条件や信号特性、必要な性能を確認したうえで、適切な電圧レベル変換方法を選択することが重要です。
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