パワー半導体として知られるPMICとは?機能や用途なども解説!
2024.08.22更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶パワー半導体や複合電源ICと呼ばれるPMICについてご存知でしょうか?スマホやタブレット端末などに搭載されている高機能な電源ICで、我々が日頃使っている機器のバッテリーを長持ちさせるのに役立つ部品です。今回はそんなPMICについて、基本的な特徴や用途、機能などを解説していきます。
PMICとは
まずはPMIC(Power Management IC)とはどんなICなのか、他の複合電源ICについても触れながら解説していきます。
複合電源ICとPMICの関係性
まずは、混同しがちな複合電源ICとPMICの関係性を説明しましょう。複合電源ICとは、電源供給を行うだけでなく複数の機能を搭載した電源ICのことです。複合電源ICの中には単一機能の電源ICを複数組み合わせてパッケージ化したマルチチャネルIC、異なる機能のICを組み合わせた狭義の複合電源ICがありますが、狭義の複合電源ICをシステムの電源管理に特化させたものがPMICと呼ばれます。
PMICはスマホやタブレットなどの機器の電源状態を最適に保つ目的で使用され、個々の部品へ供給する電力や動作速度を左右するスイッチング周波数を制御したり、部品への電源供給をON/OFFするなどの機能を有しています。
実際のPMICの使い方とは?
PMICはスマホやタブレット、ワイヤレスイヤホン、ウェアラブル機器などのバッテリー駆動の端末に多く搭載されています。また、1つの機器に1つのPMICとは限らず、スマホを例にとるとカメラ用のPMIC、モニター用のPMIC、ディスプレイ用のPMICなど、部品単位でPMICが設置されている場合もあります。
基本的にPMICは単に電源を供給するだけでなく、部品やシステムの最適な電源状態を維持するのに使用されるため、用途に応じてPMICの構成や機能は異なります。汎用的な部品というより、用途毎に特化した電源管理部品として様々な電子機器に搭載されていると覚えておきましょう。
PMICの基本的な機能
続いて、PMICが持つ一般的な機能のうち、代表的な3つの機能を解説していきます。
OTPによるシーケンス制御
まず1つ目は、OTP(One Time Programmable Rom)と呼ばれる、電源供給の初期値とタイミングを設定する機能です。そもそもPMICは電源の管理/供給モジュールであるため、最初に各部品へ電源を供給しなくてはなりません。そして、供給先の部品によって起動時に使用する電圧が異なるため、初期の給電電圧をあらかじめ決めておくのがOTP機能です。
また、複数の部品に同時に給電し立ち上げると、大きな突入電流が流れたり、各部品の初期動作が他部品へ悪影響を及ぼしたり、通信バスが渋滞してしまう恐れがあります。そこで、部品毎に電源を供給あるいは遮断する順序もOTPのシーケンス制御によって決められています。
DVSによる電圧制御
OTPが初期の電源供給動作を制御するのに対し、定常状態の各デバイスの駆動状態に合わせて定常時の供給電圧を制御する機能をDVS(Dynamic Voltage Scaling)と呼びます。前提として、デバイスに搭載されたICチップなどが要求する電圧は常に一定とは限りません。
例えばCPUのような演算素子であれば計算量に応じて消費電力が異なりますし、各種チップを冷却するファンも、周囲の熱量に応じて負荷電流値が変わります。そんな中、デバイスや部品類の稼働状態を監視し、常に最適な電圧を供給するのがDVS機能で、電源供給を維持したまま電圧を段階的に増減させることで最適な消費電流となるよう制御します。
DVFSによるスイッチング周波数制御
DVSと同様、負荷状態に応じてスイッチング周波数も制御する機能をDVFS(Dynamic Voltage and Frequency Scaling)と呼びます。各部品は常に最速で動く必要はなく、タスク数が多い時は各タスクの速度を上げ、タスク数が少ない時は必要最低限の速度でこなせば十分なため、DVFSがシステムの負荷状態に応じてスイッチング周波数を最適に制御し、スイッチング電流による損失を最小限に抑えています。
PMICを使う具体的なメリット
PMICを使う最も大きなメリットは、省電力化が図れるということです。一般的な回路はもちろん、SoCなどのシステム化されたICチップに対しても、稼働状態に応じた最適な電力供給を実現します。また、電力の使用状況が最適化されていれば過剰な熱を持つ部品が減るため、結果的に冷却性能が向上し、冷却用スペースが削減できます。
さらに、基本的に部品数が多くなるほど給電回路や電源ユニットが必要になりますが、PMICを使えば1つの電源回路で複数の部品に電源供給できるのもメリットです。複雑なシステムになっても回路を小さく構築でき、製品サイズやコストの低減に貢献します。
PMICを使う時の注意点
一見すると非常に優れたPMICですが、注意しなくてはならない点もいくつかあります。まず汎用性の高いPMICを使う場合、供給先のチップ構成に合わせて最適化されているわけではないため、供給できる機能に対して余計な面積を使ってしまう可能性があります。
また、PMIC自体が1つで複数の機能を有している関係で、基盤上に搭載する際はそれなりにまとまった面積を必要とする上、PMIC自体が発熱源となるためPMIC自体の冷却も考慮しなくてはなりません。PMICを使う際は搭載してもなおシステムとして最適化できるのか、という視点で設計するように心がけましょう。
まとめ
今回はデバイス機器の最適運転に欠かせない部品であるPMICについて解説しました。PMICは様々な機能を持つ電源ICのことで、省電力化や基板サイズの低減などをもたらす、非常に有用な部品です。IoT化やDX化の推進によってモバイル機器がさらに増加する可能性が高い以上、今後ますますPMICの需要は伸びることが期待されるため、これを機にぜひ理解を深めて下さい。
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