漏れ電流(漏洩電流)とは?種類や対策方法なども含め解説!
2024.08.20更新
機電系エンジニア必見!!貴重なフリーランス案件はこちら ▶製品の安全性や信頼性を確保したい場合、漏れ電流の基本を理解することは技術者にとって重要です。そこで今回は、漏れ電流がどのような現象か、検出方法、対策手段までを分かりやすく解説します。
漏れ電流とは
漏れ電流とは、本来は流れてはいけない、電流の経路から外れた場所で電流が流れてしまう現象のことです。漏洩電流、リーク電流などとも呼ばれます。漏れ電流は予期せぬ電流であり、無駄に電力を消費するほか、電子機器の不具合や破損の原因となるため、可能な限り低減する必要があります。また、大電流を流す機器においては、感電によって人命に危険を及ぼす可能性があるので、特に慎重な対策が必要です。
なお、電子回路において、電源OFF時に流れる微小な電流のことも「漏れ電流」と呼ばれています。こちらは機器の消費電力に影響するだけで危険性は全くないため、区別して理解しておくことが重要です。
抵抗成分とコンデンサ成分の違い
漏れ電流には抵抗成分とコンデンサ成分の2種類があり、それぞれで影響が異なるため違いを理解しておかなければなりません。
静電容量分漏れ電流(Ioc)
コンデンサ成分は「Ioc」とも呼ばれ、容量成分を通して流れる漏れ電流のことです。インバータ回路など、交流信号を発生させる機器で主に発生します。漏れ電流の大きさはコンデンサに流れる程度しかなく、人体への危険度はないため、コンデンサ成分による漏れ電流は基本的に考慮しないことが多いです。
ただし、特に高周波信号によって漏れ電流が発生すると、電磁波によるノイズが生じて機器の不具合につながる可能性はあります。そのため、EMC試験などを行い、ノイズ強度が問題がないレベルであることを確認する必要があります。
抵抗成分漏れ電流(Ior)
抵抗成分は「Ior」とも呼ばれ、絶縁箇所の劣化などが原因で生じる漏れ電流のことです。回路がショートして大電流が流れ、感電や火災などにつながる可能性があるため、一般的に「漏れ電流」といえば抵抗成分のことを指す場合が多いです。
また、コンデンサ成分の漏れ電流は90°位相が遅れて力率がゼロになるので、それと比較する形で「有効漏れ電流」と呼ばれることもあります。
漏れ電流の防止方法
漏れ電流を検知・防止する方法としては、漏電検知器(漏電遮断器)を用いるのが一般的です。漏電検知器は漏れ電流の大きさを検知して自動的に回路を遮断する機器で、特にショート時に人体に致命的な影響を及ぼさないような保護を行います。
漏電検知器の方式としては、「Io方式」「Ior方式」「Igr方式」の3種類が主流です。最も古くから使われているのはIo方式で、漏れ電流の抵抗性分とコンデンサ成分をまとめて検知します。最もシンプルで使いやすいですが、コンデンサ成分が多い回路では漏電検知が正しく行えないため、そんな場合は、漏れ電流の抵抗成分のみを検知するIor方式が有効です。
また、Igr方式はさらに性能がよく、検査用の外部電源を入れることで機器の電源を入れる前に絶縁劣化を検知できます。外部電源を入れる分設置は面倒ですが、漏れ電流を未然防止したい場合や、対象の回路を確実に検知したい場合におすすめです。
漏れ電流の測定方法
最後に、漏電遮断器や漏電検知器を入れていない場合に漏れ電流を検知する手法を紹介します。その方法は、クランプメータで電源・GNDのケーブルを挟みこみ、電流値を測定することです。
クランプメータはケーブルから発生する磁界の強さを測定し、電流値を検出する装置ですが、複数のケーブルを挟んだ場合、磁界の合計値で電流を測定します。そのため、他に電流の流れる経路が存在しない(漏れ電流がない)場合、電源とGNDに流れる電流は方向が逆で値は同じになるため、磁界が相殺されて測定値はゼロとなるのです。
一方、漏れ電流が発生している場合、電源とGNDに流れる電流値が変わるため、漏れ電流値がクランプメータで測定できることとなります。もちろん、クランプメータでは測定感度が高いわけではありませんが、簡易的な漏れ電流の検査にはなるでしょう。
まとめ
今回は、漏れ電流(漏洩電流)の基本的な知識や対策方法、簡易的な測定方法などを紹介しました。漏れ電流は意図しない経路で電流が流れる現象のことで、特に大電流が流れる機器では人体に危険を及ぼすため、対策が欠かせません。
漏れ電流を防ぐには漏電検知器が有効ですが、抵抗成分とコンデンサ成分の違いを把握して検知方法を選ぶ必要があります。機器の回路特性を理解して、最適な対策が行えるようにしましょう。
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