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協働ロボットとは何か? ――その利点や活用例

2023.10.07更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

201312月」に変わったこと――産業用ロボットの課題

協働ロボット(Collaborative Robot)は、産業の中での作業を「人と一緒に」行う(協働する)ロボットのことを示す。産業の中で使用されるロボットであるため、産業用ロボットの一種であるものの、その性質は大きく異なる。

従来の産業用ロボットは、人の代わりに作業を任せるものであった。ある意味、協働ロボットもその役割も果たすといえる。しかし、従来の産業用ロボットは、従来人が行っていた作業を代替することで、高速化して生産性を高めるため、無駄がなく高速な作業や、大きな力(大きい出力)を使う作業を任せた。つまり、近づくと危険な機械であり、巻き込まれたらケガをしたり、最悪、命にもかかわることがあった。

 そのため従来、定格出力で80Wを超える産業用ロボットについては、法律(労働安全衛生法第20条に基づく労働安全衛生規則:安衛則)に基づいて安全柵などの設置をし、人と隔離する必要があった。それが、201312月に、その法律の規制緩和(平成251224日付基発12242号通達:2号通達)があり、大きく状況が変わった。この通達では、「リスクアセスメントにより危険のおそれがなくなったと評価できるときは、協働作業が可能」であるとし、その評価の範囲内であれば、安全柵の設置が不要になった。

 人と協働させるためのロボットの条件としては、以下のように定められている。

 “産業用ロボットを使用する事業者が、労働安全衛生法第28条の2による危険性等の調査(以下 「リスクアセスメント」という。)に基づく措置を実施し、産業用ロボットに接触することにより労働者に危険の生ずるおそれが無くなったと評価できるときは、本条の「労働者に危険が生ずるおそれのあるとき」に該当しません。”

 “国際標準化機構(ISO)による産業用ロボットの規格(ISO 10218-1:2011及びISO 10218-2:2011)よりそれぞれ設計、製造及び設置された産業用ロボット(産業用ロボットの設計者、製造者及び設置者が別紙に定める技術ファイル及び適合宣言書を作成しているものに限る。)を、その使用条件に基づき適切に使用してください。“

(厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課の資料より引用)

 要は、「労働安全衛生法に基づくリスクアセスメントを実施し、かつISOが定める基準をクリアした産業用ロボットを用いればよい」ということになっている。

 従来、産業用ロボット導入においては、多額の費用がかかってくることと併せ、安全対策をするために十分な敷地面積が必要であった。また、当然ながら産業用ロボットの動作は人ほど器用ではなく、画一的な動作しか任せられない。そのため、人に変わってロボットが作業できることには限界があった。故に、ロボットに代替させる作業による効果と、投資費用のバランス取が重要になる。つまりロボットを導入した効果により、投資した費用を回収できなければならなかった。よって、その適用範囲は、一部の大手企業での比較的大規模な生産設備や、大量生産の現場がメインであった。

 2号通達と併せ、各メーカーの安全技術やリスク評価方法も進化してきたことも相まって、産業用ロボットの導入コストや技術的な難易度のハードルが一気に下がることになり、中小企業にも手が届くようになった。また人がロボットに近づいて一緒に作業ができるようになったことで、融通の利かないロボットの作業を逆に人が助けることで幅を広げるなど、自動化の適用範囲が広がった。

 2020年以降のコロナ禍で、感染対策のための省人化や遠隔管理の観点で、規模を問わない製造業で協働ロボットに注目が集まる。

人を生かす、「協働ロボット」の活用例

器用に作業をする協働ロボットの活用事例は、テレビ番組の報道でもよく登場するようになった。人に変わって、フライパンで上手に炒め物をするロボットや、弁当の工場で惣菜を丁寧に詰めるロボットの様子を見たことがあるという方もいるだろう。そのような細やかでデリケートな作業も、従来の産業用ロボットではできなかったことだ。

 製造業の現場では、部品や治具、完成品の搬送、ねじ締めなどの組み立て作業でよく活用されている。例えば従来、搬送の業務は、広い敷地の中で移動時間や待ち時間など、従来結構な時間をかけてきた上、細やかな指示に従って正確に部品や治具を目的地に運び、なおかつその後の工程へつなぐために人自身が整理整頓をするといったことも必要だった。貴重な人の工数(人件費)をこのような、単純かつ長時間拘束される作業で奪われるのはもったいない話だ。従来の産業用ロボットでは導入スペースも必要であり、かつ人件費をかけるよりも効率化を図ることもできなかった。そこで、協働ロボットであれば、導入スペースは最小限ですみ、ロボットが苦手な作業は人が少しサポートするなどして、搬送作業の大半を自動化できるようになった。

 また、ねじ締めの工程では、自動化することで、人を単純作業から解放することの他、作業の正確性や精度の向上や、不具合が生じた時にトレーサビリティー確保にもつなげられる。また、決まった姿勢での長時間の単純作業が人の身体に負荷がかかることもある。ロボットであれば、体調も気分も関係がない。

 そのように、ロボットの協働によって、省人化や自動化ができることと併せ、人を創造性のない作業や身体や精神に負荷がかかるような作業から解放し、よりやりがいがあり創造性のある業務へ人をシフトすること可能となる。

 人のそばで働く協働ロボットには、このように人がよりよい仕事をすることで、全体的な仕事の質向上や職場改革の実現などが望めるなど、利点や可能性、効果がさまざまである一方で、導入に関する課題も存在する。その課題については、次回に解説する。

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