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  • 国内のスマートファクトリーの取り組みはどこまで進んでいるのか!
  • 国内のスマートファクトリーの取り組みはどこまで進んでいるのか!

    2023.10.05更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    「スマートファクトリー」とは、文字通り「工場」を「スマート(Smart)化」する構想だ。これは生産ラインにロボットを入れたり、自動化したりといったことの、さらに一歩先の取り組みだ。

     製造業の工場内の作業や管理の情報をデジタル化し、そのデータをセンサを使って吸い上げてインターネットを経由して集約し、分析や共有、管理を行うことにより、効率化や改善・改革を進めていく取り組みである。いわゆる、製造業という産業における「モノのインターネット(IoT)」の推進だ。これは、設計・製造・出荷というものづくりのプロセスそのものだけではなく、それ以前の企画やマーケティング、逆に市場に出た後のアフターケア・保守にまで及んで発展可能な、壮大な構想である。

     世界では、ドイツの政策が発端とされる「インダストリー4.0(第四次産業革命)」という概念の下、数年前からその取り組みが加速してきている。

     日本政府においては、国内の少子高齢化や労働者人口の減少などの懸念や、製造業における国際的競争力強化を背景とし、スマートファクトリー推進を実施し、大きな予算をそこに投じてきた。2017年には「コネクテッド・インダストリーズ税制(IoT税制)」を創設。IoTシステムや、センサー、ロボットの導入などを財政支援した。この税制は既に廃止されたものの、日本政府として引き続き重点取り組み分野として、集中投資をしていく方針である。

     #「ライトハウス」認定にみる、日本での状況

     しかしながら、スマートファクトリーの取り組み付いて、日本国内は欧米や中国と比較するとやや遅れを取っているといわれる。国内のスマートファクトリー推進については、海外諸国と比較した際の製造業全般における慢性的なデジタル化の遅れや、欧州製ITソリューションの台頭などがその要因の一部として挙げられる。

     世界経済フォーラムとマッキンゼー・アンド・カンパニーによるインダストリー4.0の手本となり得る先進的工場(ライトハウス)を認定する取り組み「グローバル・ライトハウス・ネットワーク」の推進状況を見ても、先進しているのがやはり欧米や中国であり、日本はその後ろを追いかける形で進展していることが見て取れる。

     2020年に日本から初めて「ライトハウス」として認定されたのは、日立製作所大みか事業所と、GEヘルスケア・ジャパンの日野工場であった。本認定の主体が欧米組織であり、バイアスがないのかと少々気になるが、あくまで客観的な指標に基づいて評価されているのと、中国の拠点が多く認定されているのとで、実態にみあった評価であると考えてよいだろう。

     

    出典:The Global Lighthouse Network

     日立製作所 大みか事業所は、日立グループが社内外で展開するIoT基盤「Lumada」のビジネスモデルとなっている拠点である。同事業所は、高効率で、柔軟かつ持続性の高い多品種少量生産をめざしRFIDを利用した可視化の仕組みを導入したり、2015年からIoTを活用して成果を出してきた。Lumadaも、数少ない製造業向け国産デジタル基盤の1つとしての活躍が期待される。

     GEヘルスケア・ジャパンの日野工場は親会社GEによるIoTプラットフォーム「Predix」を活用し、在庫管理や工程・進捗管理を行っている。GEは、既に2016年頃から「ブリリアントファクトリー」という自社グループ拠点のスマートファクトリー化に取り組んでいた。世界中の全GE拠点の「先端を走っている」と言っていたのが、日本の日野工場だった。以前から、VMやシックスシグマ、リーンシックスシグマといった、「カイゼン」の先端の取り組みにいち早く取り組んできた拠点でもある。

     しかしながら、日本国内でそのような最先端技術を取り入れたスマートファクトリー拠点は、今現在も少なく、まだ発展の途上であるといえる。

     #日本国内のスマートファクトリー化の現状や課題

     国内製造業は階層構造になっており、すそ野が広い。大企業はそのピラミッドの上の一部であって、国内の8割が中小企業が占める。トップレイヤ―の大企業においては、PLMIoTといった高級なデジタル基盤を早くから導入し展開しているものの、やはり裾野の方になるにつれてデジタル化に遅れが見られ、属人的作業や管理もいまだ目立つ現状である。つまり、スマートファクトリー以前の状況ということだ。

     2020年度の「ものづくり白書」においても、製造業全体で「デジタルは未活用」という企業が過半数近くを占めていると伝えている。またスマートファクトリーの取り組みについては、大企業のスマートファクトリー導入率は6割、中小企業では50パーセント弱であるという。そのうちでは、取り組みの規模やレベル、成果の有無もそれぞれである。日立やGEレベルの取り組みは実際、ほんの一部だ。

     ただし、デジタル化についていえば、このコロナ禍で感染対策をする中で、急速に進展してきた。たびたび政府から出されていた「緊急事態宣言」で、国内企業に対して、密回避や、リモートワークの推進の呼びかけが強く行われた。それに従うには、デジタル化やクラウドシステムの導入をなんとしても進めるしかないと、これまで「セキュリティが」「コストが」と、何かと理由をつけて取り組んでこなかった企業らも、重い腰をようやくあげたような形だ。

     そのような状況で、工場のリモートシステムや無線化の検討が進み、IoTやスマートファクトリーへの注目度も高まっている。日立やGEの取り組みを別世界のように見ていたような企業も、わがこと感が少しずつ涌き、注目をし出している。そういう層を狙い、インターネットにつなぐことのできない古い装置に外付けできるIoT向け機器のサービスや廉価な機器など、日本独特の課題にも対応できるような仕組みが増えている。

     日本貿易振興機構(ジェトロ)がBIS Resarchのデータを引用し説明しているところでは、スマートファクトリー市場の日本国内市場規模は、2019年に84億ドルで中国に次いで世界第2位。2025年までの市場予測でも、同市場は堅調に拡大すると見込まれるとしている。

    出典:ジェトロ

     しかしながら、スマートファクトリー推進のための人材確保や技術者育成、セキュリティ対策の対処といったことは、今もなお大きな課題となっている。これまでのようなメカやものづくり中心のスキルだけでは今後は通用せず、これまでとは大きく異なるスキルが要求され、かつ技術が進化の途上であることから知識や技術を常に刷新していかなければならない。

     これからを担う若手が自社で育つには時間がかかる。高度なセキュリティノウハウや、AI(人工知能)やデータサイエンスなど最先端の技術を持つ技術者を外から確保するにしても、高い給与を提示してヘッドハンティングするなど投資しなければならないこともあるだろう。

     また技術専門教育については、人材も資金も潤沢な大手企業であれば自社でまかなえるものの、中小企業ではそうはいかない。外部講師を呼ぶにしても結構なコストであり、集合研修をやるにしても人数を集められないといったことも起こる。この状況では、大手と中小の格差もますます開きかねないだろう。日本政府や経産省も、人材育成や基盤整備への投資を掲げているため、今後の具体策に期待したいところだ。

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