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  • 全固体電池のメリットとは?原理や業界動向を紹介
  • 全固体電池のメリットとは?原理や業界動向を紹介

    2023.10.07更新

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    この記事を書いた人

    機電系専門ライター Div.長谷川

    長谷川

    FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
    アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
    電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

    現在、クルマ業界では世界中が電動化に舵を切っていますが、電気自動車はコスト面や航続距離などで課題が多く、普及が進んでいない状態です。これらはリチウムイオン電池の性能が低いのが原因で、発火・爆発の危険性があるなど、他にもいくつかの課題があります。

    そんなリチウムイオン電池の課題を解決しうる次世代電池として、特に日本で注目が集まっているのが全固体電池です。本記事では、全固体電池について、課題や将来の展望も含め詳しくお伝えします。

    全固体電池とは

    まずは全固体電池の特徴や、従来のリチウムイオン電池との違いを解説します。

    次世代型のリチウムイオン電池

    全固体電池はリチウムイオン電池の一種で、リチウムイオン電池で使っている電解液を、固体の電解質に置き換えた電池のことです。

    電解質が固体であることから、従来の電池では避けられなかった液漏れリスクをなくすことができ、また材質の違いからさらなる高性能化も期待されています。

    クルマへの適用にはまだまだブレイクスルーが必要ではありますが、研究が盛んに行われていることから将来展望が楽しみな技術です。

    電解質に固体を用いる

    本来、電池として機能するには電解質が液体であるのが通常でした。電池は、活物質に含まれるイオンが電解質の中を動き、電極間で電子をやりとりすることで電流が流れますが、固体は電導率が低いことから、電池として機能させるほどイオンが動かないとされていたからです。

    しかし、固体にも関わらず電導率が高く、十分な電気を流せる電解質が発見されたことから、全固体電池が現実的なものとして注目を浴びるようになりました。

    材質により性能や用途が異なる

    全固体電池の電解質は、用途や求める性能によって様々なものが開発されています。

    材質は、伝導率が高い「硫化物系」と、伝導率は硫化物系に及ばないが安全性の高い「酸化物系」が主流であり、小型電池には酸化物系、車載などの大容量電池には硫化物系が用いられることが多いです。

    他にも、構造を「バルク型」と「薄膜型」といった形にするなど、性能向上や安全性向上のために多岐にわたる工夫が行われています。

    全固体電池のメリット

    それでは、全固体電池に期待されているメリットについてお伝えします。

    発火・爆発の危険性が少ない

    従来のリチウムイオン電池は、電解液に発火性のある有機溶剤を使用する必要があり、衝撃によるダメージや液漏れなどにより電池が短絡した際、発火・爆発の危険性があることから、安全対策を何重にも行う必要性がありました。

    全固体電池の場合は、液漏れが発生せず、さらに危険性の高い電解質を使わずに済む可能性があることから、発火の危険性が少ないというメリットが期待されています。

    安全性が高くなれば、安全対策のために行っていた冷却システムや衝撃保護などを最低限に抑えられるので、コストやサイズの削減にも役立ちます。

    高温・低温下でも使用できる

    従来のリチウムイオン電池では、高温時には有機溶剤が揮発、沸騰するリスクがあり、また寒冷地では有機溶剤の電解液が凍結して性能が極端に低下することから、使用温度範囲が限られるという問題がありました。

    全固体電池は、電解質が固体である分、高温や低温下でも安定した動作が可能となるメリットがあります。

    実際に、日立造船が開発した硫化物系の全固体電池では、-40℃~120℃の過酷な環境下でも安定動作していることが報告されています。

    電池寿命が長い

    リチウムイオン電池は副反応により、電解液が分解されガスが発生することにより、寿命が減少することが知られています。その点、全固体電池の場合は副反応が起きづらいことから、電池寿命をより長くできる可能性があるのです。

    特に酸化物系の全固体電池では、充放電による性能劣化がほぼ発生せず、サイクル寿命の大幅な増加が報告されています。

    エネルギー密度が上がる

    全固体電池では、従来のリチウムイオン電池よりエネルギー密度が向上することが期待されています。

    これは、電解質よりも電極の材料によって決まります。従来のリチウムイオン電池では、電解液との関係上、電極が溶けてしまう材質の電極が採用できないといったことから、使用できる電極が限られるという問題がありました。

    その点、全固体電池であれば電極が溶ける心配がない分、自由に電極を使用できることで結果的に性能向上につながる可能性が期待されています。

    全固体電池の課題

    全固体電池には様々なメリットがあることをお伝えしましたが、リチウムイオン電池に代わる性能を得るには、課題が山積しているのが現状です。ここからは、全固体電池が持つ課題点をお伝えします。

    電極と電解質の接触面積が小さい

    全固体電池が持つ一番の課題は、電解質が固体であることから、電極と電解質の接触面積が狭く、界面抵抗が高くなることです。

    電解質が液体の場合、電解液が電極に染み込むことから、電極と電解液の接触面積は広いのですが、全固体電池の場合は固体同士の点接触になることから、接触面積は小さくなります。

    接触面積が狭くなるとイオンの移動が阻害され、電池性能は大幅に下がるため、単にイオン伝導率が高い材料ではなく、接触面積を広げられる電解質材料を開発する必要があるのです。

    この課題を解決するため、電極と電解質を高圧プレスする、ガラス材の電解質を使用するなどの、接触面積を増大させる研究が行われています。

    寿命が短い

    現状の課題として、サイクル寿命の短さも指摘されています。充放電を繰り返すと電極や電解質の体積は少しずつ変化するので、電極と電解質の隙間が生じてしまい、接触面積が減少してしまうからです。

    この問題についても、電極や電解質の体積変化を抑えるなど、解決に向けた研究が進んでいます。

    コスト競争力が低い

    実用化という面では、従来のリチウムイオン電池に対してコストが高くなるのも課題です。従来のリチウムイオン電池は、大量生産される中で限界近くまでコストが下がっています。

    しかし、全固体電池は未だ研究室段階の開発状況であり、理想的な電解質が発見されたとしても、量産設備の構築やコスト低減を行う期間が必要になります。

    よって、電池の置き換えが始まるまでにはかなりの時間を要するでしょう。

    全固体電池の現状と展望

    ここまで、全固体電池に期待されるメリットや、課題についてお伝えしましたが、現状の開発状況はどのようになっているのでしょうか。全固体電池の現状と、将来の展望をお伝えします。

    小型の全固体電池は実用化が進んでいる

    まず、電池容量の小さな小型電池については、村田製作所が酸化物系の全固体電池を2020年に量産を開始したことを皮切りに、全固体電池の実用化が進みつつあります。

    酸化物系の全固体電池は発火性がなく、耐熱性にも優れていることから、電子部品とともに基板実装して使えるのが特徴です。

    サイクル寿命が非常に長いことも報告されており、「交換の必要がない電池」としてウェアラブルデバイスやIoTへの活用が期待されています。

    車載用途では課題が多い

    ただし、車載のように大容量が求められる電池においては、まだまだ実用化までの課題は山積しているのが現状です。

    トヨタ自動車は、2020年代前半に全固体電池をハイブリッド車に投入すると発表していますが、電気自動車に使うには性能や寿命に課題があることが分かっています。

    全固体電池以外にも、従来のリチウムイオン電池の改良や、他の次世代電池の開発も進んでいるため、全固体電池が車載用でどこまで実用化していくかは未知数だといえるでしょう。

    官民の協力により開発が加速

    現状では課題の多い全固体電池ですが、現在は企業の開発を政府が後押ししているため、さらなる開発の加速が期待されてもいます。

    この背景には、リチウムイオン電池の主導権を中国や韓国を奪われたことがあり、再び電池開発の主導権を握るため、次世代電池である全固体電池に注力しているのです。

    さらなる研究によって課題が解決すれば、全固体電池が持つ本質的なメリットにより、従来の電池を置き換える可能性は大いにあると言えるでしょう。

    まとめ

    今回は、次世代電池として注目を集めている全固体電池について、メリットや現状の課題、将来性などについて解説しました。

    全固体電池は官民連携で開発が進んでおり、期待の高まっている次世代電池ですが、現状は課題が山積しており、特に大容量での利用には時間がかかる状態です。

    ただ、全固体電池が持つ本質的なメリットもあることから、将来のイノベーション次第では従来のリチウムイオン電池を代替する可能性もあるといえるでしょう。

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