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EtherCAT(イーサキャット)とは?仕組みや特徴、設計時のポイントを解説

                   

2026年9月25日更新

この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川
「FREE AID」編集部:長谷川

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。

EtherCAT(Ethernet for Control Automation Technology)は、産業機器やFA装置などで使用される産業用Ethernetの一つです。サーボモータやI/O、センサなどの機器を接続し、高速かつリアルタイムにデータをやり取りできることから、モーション制御をはじめとするさまざまな用途で利用されています。本記事では、EtherCATの仕組みや特徴、ネットワーク構成、設計時に確認したいポイントを設計者向けに解説します。

EtherCATとは

EtherCATとは

EtherCATは、Ethernetフレームを利用して産業機器間でデータ通信を行うリアルタイム通信技術です。IEC 61158などで規格化されており、産業用ネットワークとして広く利用されています。

一般的なEthernetでは、ネットワーク上の機器がフレームを受信してからデータを処理し、次の機器へ送信するという方式が基本です。一方、EtherCATでは、フレームを各機器が通過する際に、必要なデータをその場で読み書きします。

この方式により、複数の機器に対するデータを効率よく処理できるため、サーボモータの位置・速度指令やフィードバック、I/Oデータの入出力など、通信周期や同期精度が重要になる用途に適しています。

EtherCATの特徴

EtherCATの特徴

EtherCATには、産業機器の制御に適したさまざまな特徴があります。特に重要なポイントを解説します。

高速・リアルタイムな通信が可能

EtherCATは、複数のスレーブと短い周期で効率よくデータをやり取りできるため、リアルタイム性が求められる制御に適しています。EtherCATでは、マスタから送信した一つのフレームを複数のスレーブが通過させながら、それぞれのスレーブに必要なデータを読み書きします。

そのため、スレーブごとに通信を繰り返す必要がなく、複数の機器のデータを一つのフレームで効率よく処理できます。また、各スレーブでフレームを受信して処理し、再送信する処理も必要ないため、通信処理のオーバーヘッドを抑えられます。

これにより、複数のI/Oやサーボドライブなどに対して、短い通信周期でデータを更新できます。例えば、サーボモータの位置指令や速度指令を周期的に更新するモーション制御では、通信の遅延や周期のばらつきが制御性能に影響するため、こうした短周期で効率よく通信できる特性が重要になります。

複数機器を高精度に同期できる

EtherCATは、ネットワーク上に接続された複数の機器を高精度に同期できるため、複数軸のサーボモータを連携して動作させるモーション制御などに適しています。

例えば、複数のサーボモータを同時に動作させる場合、それぞれの機器で指令を受け取るタイミングや制御処理のタイミングがずれると、軸間の位置や速度にずれが生じる可能性があります。特に、多軸を協調させて動かす装置では、こうしたタイミングのずれが加工精度や動作性能に影響することがあります。

EtherCATでは、Distributed Clocks(分散クロック)と呼ばれる機能によって、ネットワーク上の機器のクロックを高精度に同期できます。これにより、各機器の動作やデータ取得のタイミングを高精度にそろえられるため、複数の機器を連携して動作させる制御に適しています。

EtherCATのネットワーク構成

EtherCATのネットワークは、接続する機器や装置の構成に応じて、ライン型やスター型、リング型などのトポロジーを構成できます。EtherCAT対応機器には複数のポートを備えた製品も多く、機器を順番に接続することで、比較的シンプルにネットワークを構築できます。

ライン型

ライン型は、マスタからスレーブを順番につないでいく構成です。配線がシンプルで、装置内の機器を一列に配置するような構成に適しています。一方で、途中のケーブルや機器に障害が発生すると、その先の通信にも影響する可能性があるため、装置構成や保守性を考慮して配線する必要があります。

スター型・分岐構成

スター型・分岐構成は、ジャンクションなどの分岐機器を使用して、ネットワークを複数の方向に分岐させる構成です。装置内で機器が複数の方向に配置されている場合など、ライン型では配線しにくい構成に対応できます。機器の配置に合わせて通信経路を分けられるため、複雑な装置でも配線を整理しやすくなります。

リング型

リング型は、ネットワークを環状につなぐ構成です。対応する機器やマスタを使用することで通信経路を冗長化でき、ケーブル断線などの障害が発生した場合でも通信を継続できる構成を実現できます。ただし、冗長化の可否や対応方法は機器の仕様によって異なるため、使用するマスタやスレーブが必要な機能に対応しているか確認する必要があります。

EtherCATを設計する際のポイント

EtherCATを設計する際のポイント

EtherCATを実際の装置に組み込む際は、通信方式だけでなく、必要な通信性能や使用する機器、配線環境まで考慮することが重要です。主な設計上の注意点について解説します。

通信周期とデータ量を確認する

まず、制御に必要な通信周期と、1周期あたりに送受信するデータ量を確認します。EtherCATでは短い周期で通信できますが、接続するスレーブの数やI/O点数が増えるほど、1周期で処理するデータ量も増加します。

特にモーション制御では、位置・速度などの制御データを一定周期で更新する必要があるため、必要な通信周期を満たせるか確認することが重要です。接続する機器数やデータ量を踏まえて、実際のシステム構成で要求する通信性能を確保できるか検討します。

使用する機器の対応機能を確認する

EtherCAT対応機器であっても、製品によって対応している通信機能や同期機能は異なります。そのため、単に「EtherCAT対応」と確認するだけでなく、装置で必要となる機能を利用できるか、データシートやマニュアルで確認することが重要です。

例えば、一定周期で制御データをやり取りする場合は必要な通信方式に対応しているか、複数の機器を同期して動作させる場合は、必要な同期機能に対応しているかを確認します。また、マスタとスレーブの組み合わせによって利用できる機能が異なる場合もあるため、使用する機器を個別に確認しておく必要があります。

配線とノイズ対策を考慮する

EtherCATはEthernetの物理層を利用するため、通信ケーブルやコネクタなどの物理的な接続条件も考慮する必要があります。特にFA装置では、インバータやサーボアンプなどのノイズ源と通信ケーブルが近接する場合があるため、配線経路やシールド、接地方法などを検討します。

また、動力線と通信線を長い距離にわたって並走させると、電磁的な結合によって通信品質に影響する可能性があります。装置の配線設計段階からノイズ源との距離やケーブルの取り回しを考慮し、必要に応じてシールドや適切な接地を行うことが重要です。

まとめ

EtherCATは、短い周期で効率よくデータをやり取りでき、複数の機器を高精度に同期できる産業用リアルタイム通信方式です。FA装置やロボット、工作機械など、複数の機器を連携させた高速な制御が求められる用途で利用されています。

実際にEtherCATを設計する際には、必要な通信性能に加えて、接続する機器やネットワーク構成、ノイズ環境なども考慮する必要があります。EtherCATの特徴と設計時のポイントを理解し、装置に適したネットワーク設計に役立ててください。

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