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GaN半導体とは?特徴や用途、採用時の設計ポイントを解説

                   

2026年9月22日更新

この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川
「FREE AID」編集部:長谷川

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。

GaN半導体は、窒化ガリウム(Gallium Nitride:GaN)を材料に使用した半導体デバイスです。高い耐圧と高速なスイッチング特性を持ち、電源回路の小型化や高効率化が実現できることから、ACアダプターや充電器、通信機器の電源、電気自動車などへの採用が進んでいます。

本記事では、そんなGaN半導体の特徴や主な用途、GaN半導体を採用する際の設計ポイントについて解説します。

GaN半導体とは?

GaN半導体とは?

GaN半導体は、窒化ガリウム(Gallium Nitride)を材料に使用した半導体デバイスです。電源回路では、GaN HEMT(High Electron Mobility Transistor)が代表的に使用されています。

一般的な電源回路ではシリコン(Si)を使用したMOSFETが広く使われています。これに対してGaNは、Siよりも高い絶縁破壊電界強度を持つため、高い電圧に対応しやすいという特徴があります。また、GaN HEMTでは異なる材料を接合したヘテロ接合によって、高い電子移動度を持つチャネルを形成できます。

こうした材料やデバイス構造の違いにより、GaN HEMTはSi MOSFETと比較して高速なスイッチングを実現しやすいです。そのため、ACアダプターや充電器、サーバー電源など、高周波化や小型化が求められる電源回路に利用されています。

GaN半導体の特徴

GaN半導体の特徴

GaN半導体の特徴は、単に「高速」ということではありません。高速スイッチングを活かして、電源回路の損失やサイズを低減できることが主なポイントとなります。

高速スイッチングに適している

GaN HEMTは、低いゲート電荷や容量特性などにより、スイッチング時の充放電を高速に行いやすく、高速なスイッチング動作に適しています。そのため、電源回路では、スイッチング素子のON/OFFを高速に切り替えることで、スイッチングに伴う損失を抑えられます。

また、高いスイッチング周波数で動作させれば、インダクタなどの磁気部品を小型化できるので、電源回路の小型・高電力密度化を行えます。

高耐圧と低オン抵抗を両立できる

GaNは、Siよりも高い絶縁破壊電界強度を持つため、高耐圧化と低オン抵抗を両立しやすい材料です。オン抵抗が小さいほど、スイッチング素子がONしているときの導通損失を抑えられます。そのため、高い電圧を扱う電源回路でも、導通損失を抑えて高効率化することが可能です。

また、大電流を扱う場合はオン抵抗による発熱が問題になりやすいので、GaN半導体を使うことで発熱の低減につなげることもできます。

逆回復による損失が小さい

Si MOSFETには、半導体構造上、ドレインとソースの間に寄生ダイオード(ボディダイオード)が存在します。このダイオードに流れていた電流が逆方向に切り替わると、逆回復による電流が発生し、スイッチング損失につながります。

GaN HEMTにはSi MOSFETのような寄生ダイオードがないため、この逆回復による損失を抑えられます。特に、スイッチング周波数が高い電源回路では、逆回復による損失を抑えられることが効率向上につながります。

GaN半導体を使った回路の設計ポイント

GaN半導体を使った回路の設計ポイント

GaN半導体は高速スイッチングが可能な一方、その特性を引き出すには周辺回路を含めた設計が重要になります。

ゲート駆動回路を適切に設計する

GaN HEMTは、Si MOSFETと比べてゲート電圧の許容範囲が狭いデバイスが多いため、ゲート駆動電圧を適切に設定する必要があります。ゲートドライバの電源電圧やゲート抵抗によって、スイッチング速度や損失、スイッチング波形が変化します。

ゲート抵抗を小さくしてスイッチングを高速化すると損失を抑えやすくなる一方、電圧変化が急峻になり、リンギングやEMIが大きくなることがあります。使用するデバイスのデータシートを確認し、推奨されるゲート駆動条件に合わせて設計することが重要です。

PCBの寄生成分を抑える

GaN HEMTは高速にスイッチングできる分、PCB配線に存在する寄生インダクタンスや寄生容量の影響が大きくなります。特に、スイッチング電流が流れる電源回路に寄生インダクタンスがあると、急激な電流変化によって電圧変動が生じ、オーバーシュートやリンギングの原因になります。

そのため、スイッチング電流が流れるループをできるだけ小さくし、配線を短くすることが重要です。ゲート駆動回路についても、ゲート・ソース間のループを小さくするなど、寄生インダクタンスを抑えたレイアウトが求められます。

損失と熱設計を確認する

GaNは高速スイッチングや低オン抵抗によって損失を抑えやすいデバイスですが、損失がなくなるわけではありません。導通損失に加えて、スイッチング損失やゲート駆動に伴う損失なども発生します。

特にスイッチング周波数を高くすると、単位時間あたりのスイッチング回数が増えるため、スイッチング損失が大きくなることがあります。そのため、GaNの低損失という特性だけを見るのではなく、動作電圧、電流、スイッチング周波数、温度などの実際の条件で全体の損失を見積もる必要があります。

さらに、発生した損失による温度上昇を確認し、デバイスの許容接合温度に収まるように放熱経路や基板設計を検討します。

まとめ

GaN半導体は、窒化ガリウムを材料に使用した半導体デバイスで、GaN HEMTは高速なスイッチングや低オン抵抗、逆回復による損失が小さいといった特徴を持っています。これらの特性により、電源回路の高効率化や高周波化、小型化に利用されています。

一方で、GaNの高速スイッチング性能を活かすには、ゲート電圧の設定やゲート抵抗、PCBの寄生成分、スイッチング波形、EMI、損失・熱設計などを適切に検討する必要があります。特に、GaN HEMTは高速なスイッチングによって寄生成分の影響が現れやすいため、データシートの推奨条件を確認しながら、デバイスと周辺回路を含めて設計することが重要です。

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