ZEV規制の内容や効果とは?各国の動向も含めて解説!
2026年5月25日更新
この記事を書いた人

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。
ZEV規制とは?
ZEV規制とは、自動車メーカーに対して一定割合以上のZEV(Zero Emission Vehicle)の販売を義務付ける制度です。そもそもZEVは、走行時に温室効果ガスや大気汚染物質を排出しない車両のことで、バッテリー式電気自動車(BEV)や燃料電池車(FCV)が挙げられます。
ZEV規制は1990年代に米国カリフォルニア州で導入された制度を起点に、現在では各国・地域で類似の制度が展開されています。この規制は単純な販売台数の義務化ではなく、クレジット制度と組み合わせて運用される点に特徴があります。メーカーはZEVの販売台数や性能に応じてクレジットを取得し、規定値を満たす必要があります。
ZEV規制の内容

ZEV規制の内容をより具体的に解説します。
制度の概要
ZEV規制では、自動車メーカーごとの年間販売台数に応じて、一定割合以上のZEVを市場に投入することが求められます。この割合は固定ではなく、政策目標に応じて段階的に引き上げられるのが一般的であり、長期的には新車販売の大半をZEVとすることを前提とした設計となっています。
また、対象となる車両の定義や評価方法も制度ごとに異なります。例えば、航続距離やエネルギー効率といった性能指標に応じて評価が変わるケースもあり、単に台数を満たせばよいのではなく、より高性能なZEVの投入が求められる仕組みとなっています。
さらに、メーカー単位での達成が基本となるため、製品ラインナップ全体でZEV比率を最適化する必要があり、車種構成や販売戦略にも大きな影響を与えます。このようにZEV規制は、排出量の抑制にとどまらず、自動車メーカーの開発方針や市場構造そのものに影響を与える制度といえます。
クレジット制度
ZEV規制では、ZEVの販売に応じて「クレジット」と呼ばれるポイントが付与されます。メーカーは一定量のクレジットを確保する義務があり、不足した場合は他社から購入するか、規制当局にペナルティを支払う必要があります。
一方で、規定以上のZEVを販売した場合は余剰クレジットを他社へ販売することが可能であり、ZEVに積極的なメーカーにとっては収益機会にもなります。この仕組みにより、単なる規制にとどまらず、市場メカニズムを活用した普及促進が図られています。
ZEVに該当する車種

続いて、ZEVに該当するのがどの車種かを紹介します。
電気自動車(BEV)
バッテリーに蓄えた電力でモーターを駆動する車両です。走行時に排出ガスを出さないことに加え、エンジンや排気系を持たないため構造が比較的シンプルで、振動や騒音が少ないという特徴があります。また、モーター駆動により低速域から高いトルクを得られるため、加速性能にも優れています。
一方で、エネルギー源をバッテリーに依存するため、充電時間の長さや充電インフラの整備状況が利便性に大きく影響します。また、航続距離やコストはバッテリー性能に依存しており、エネルギー密度や寿命、資源制約といった技術課題も残されています。
燃料電池車(FCV)
水素と酸素の電気化学反応によって発電し、その電力でモーターを駆動する車両です。燃料電池により車載で発電を行うため、大容量バッテリーを必要とせず、短時間での燃料補給や長い航続距離が期待できる点が特徴です。
また、走行時の排出物は基本的に水のみであり、環境負荷が低いとされています。一方で、水素の製造・輸送・貯蔵といったインフラ整備が十分とは言えず、加えて高圧タンクや燃料電池スタックのコストが高い点が普及の課題となっています。さらに、水素製造方法によってはライフサイクル全体でのCO₂排出が問題となる場合もあります。
ハイブリッド車(HEV/PHEV)
ハイブリッド車は、内燃機関とモーターを組み合わせて駆動する車両であり、燃費向上や排出ガス削減を目的とした技術です。特に市街地走行ではモーター主体での走行が可能となるため、燃費性能に優れています。
プラグインハイブリッド車(PHEV)は外部電源からの充電にも対応しており、一定距離であれば電気のみで走行できる点が特徴です。ただし、いずれも内燃機関を搭載しているため、走行条件によっては排出ガスが発生します。
このため、多くのZEV規制ではBEVやFCVとは区別され、対象外とされるか、あるいは移行期の技術として限定的に評価されるケースが一般的です。
各国・地域におけるZEV規制の動向

各国ではZEV規制という名称や制度設計は異なるものの、電動化を促進するための類似した規制が導入されています。各国の2026年時点での動向を紹介します。
米国
米国では、カリフォルニア州が1990年代に自動車メーカーへ一定割合のZEV販売を求めたことを始めとして、各州でZEBを推進する流れができています。また、近年では同州が2035年までに新車販売をほぼZEV化する目標を掲げるなど、規制強化の流れが続いています。
一方で、米国では州と連邦政府の権限関係により、制度の安定性に課題があります。カリフォルニア州は大気汚染対策として独自の排出規制を設ける権限を連邦政府から認められており、この枠組みを利用してZEV規制を導入・強化してきました。
しかし近年では、この適用免除の扱いを巡って連邦政府の方針が政権ごとに変化しています。例えば、ある政権ではその承認が取り消されるといった対応が行われており、規制の前提自体が揺らぐ状況となっています。さらに、カリフォルニア州が導入を進めている2035年のZEV化目標(ACC II)についても、連邦政府がその有効性を制限しようとする動きがあり、現在は州と連邦の間で法的な対立が生じています。
このように米国では、ZEV規制そのものは存在しているものの、その適用可否や継続性が政治的要因に左右されやすい状況となっています。
欧州
欧州では気候変動対策の一環として電動化を強力に推進しており、2035年以降は内燃機関車の新車販売を実質的に終了する方針が示されています。この方針はZEV規制と同様に、自動車の脱炭素化を強制力のある形で進める政策といえます。
ただし近年では、産業への影響や技術的な課題を踏まえ、合成燃料を使用する内燃機関車の扱いを一部見直すなど、現実的な調整も行われています。また、プラグインハイブリッド車の位置付けについても再整理が進んでおり、規制は単純な強化だけでなく実態に合わせた修正が加えられているのが特徴です。
中国
中国では、ZEV規制に相当する制度として新エネルギー車(NEV)クレジット制度が導入されています。この制度は、メーカーに対して一定割合の電動車販売を求める点でZEV規制と共通していますが、クレジットの取引を通じて市場メカニズムを活用している点に特徴があります。
政府主導の補助金政策やインフラ整備と組み合わせることで電動車の普及が急速に進み、現在では世界最大規模の市場が形成されています。規制を単独で導入するのではなく、産業政策と一体で展開している点が中国の特徴といえます。
日本
日本では、米国のような厳格な販売義務を伴うZEV規制は導入されておらず、政策目標や補助金を中心とした誘導型の施策が採られています。例えば2030年代に向けた電動車の普及目標が掲げられており、これに基づいてインフラ整備や購入支援が進められています。
また、日本ではハイブリッド車も重要な選択肢として位置付けられており、電気自動車や燃料電池車と組み合わせた多様な技術の活用が進められています。このように単一の技術に依存せず、複数の手段で排出削減を目指す点が特徴です。
まとめ
ZEV規制は、単なる環境規制ではなく、エネルギー政策や産業政策と密接に結びついた制度です。ZEVの定義や対象範囲、規制の厳しさは国や地域によって異なるため、その違いを理解することが重要です。今後は電動車の普及に加え、電力や水素といったエネルギー供給のあり方も含めた全体最適が求められます。ZEV規制は、その転換を促す重要な枠組みの一つと言えるでしょう。
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