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工場で使う産業機器の規格とは?ISO・IEC・UL・CEの違いや設計時の確認ポイントを解説

                   

2026年6月26日更新

この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川
「FREE AID」編集部:長谷川

大手メーカー「コマツ」、「オムロン」などで7年間、アナログ回路エンジニアとして設計・評価業務に従事。
ECU、PLCなどのエレキ開発経験を多数持つほか、機械商社での就労経験も有する。
株式会社アイズ運営の機電系フリーランスエンジニア求人情報「FREEAID」専属ライターとして、
機電分野の知識と実務経験を活かし、専門性の高い記事執筆を行っている。

産業機器の規格にはISOやIEC、ULなど多くの種類がありますが、それぞれ対象となる地域や要求事項が異なるため、設計においてはそれぞれの違いを理解しておく必要があります。本記事では、各規格の概要を技術者向けに解説します。

産業機器規格とは

産業機器規格とは

産業機器規格とは、工場や生産設備の現場で使われる機器に対して定められた共通の技術基準のことです。制御盤、インバータ、電源装置、センサ、モータ、産業用ロボットなどが対象となり、安全性や性能、耐環境性能などに基準を設けることで、設備を安定して運用できるようにする役割があります。

工場で使う機器は、家庭用製品に比べて高電圧・大電流を扱うものが多く、長時間連続運転や高温・粉じんなど厳しい環境で使用されることも少なくありません。そのため、工場向けの産業機器では「動作すること」に加えて、安全性や信頼性、各国の法規を満たしたうえで設計することが求められます。産業機器規格は、その判断基準となる重要な設計条件のひとつとなります。

産業機器で規格が重要な理由

産業機器で規格が重要な理由

産業機器規格が重要になる理由は、「安全性」「信頼性」「市場対応」の3つが挙げられます。まず最も重要な安全性については、制御盤の導体間や端子間に必要な絶縁距離の確保を要求することで、湿気や汚れで生じる絶縁低下やリーク電流を抑制するといった意味があります。

また、ブレーカやヒューズによる過電流保護、接地(アース)、非常停止回路なども安全確保のための重要な要求事項です。これらを適切に設計することで、感電や火災、設備事故のリスク低減につながります。

次に信頼性です。工場では、モータやインバータのノイズ、高速スイッチングによるサージなど、電気的な負荷が大きくなりやすい傾向があります。EMC規格に沿ってノイズ耐性や放射ノイズを確認しておくことで、誤動作や設備停止のリスクを減らしやすくなります。

さらに、設備を海外に納入する場合は、市場ごとの規格に適合していないと出荷が行えません。国内で使える仕様でも、欧州や北米では要求が異なることがあるので、対象地域の規格を早めに確認することが必須となります。

工場で使う産業機器の主な規格

工場で使う産業機器の主な規格

それでは、産業機器においてよく関わる主要な規格を紹介します。

JIS(日本産業規格)

JIS(日本産業規格)は、日本国内で用いられる標準規格です。材料や寸法、図記号、試験方法など幅広い分野を対象としており、工場で使う産業機器でも、電線や圧着端子、ねじ寸法、図面表記などでよく参照されます。

また、JISの中には、後述するISOやIECの国際規格をベースに、日本の法規や運用に合わせて整備されたものも多くあります。例えばIECと技術的に整合したJIS規格もあり、国内向け設備でも国際規格を意識して設計されるケースが多いです。

実務で注意したいのは、JISに適合していても、そのまま海外向けに使えるとは限らない点です。例えば、図記号や寸法は問題なくても、試験条件や安全要求が異なることがあります。また、部品メーカーの仕様書ではJIS準拠とIEC準拠の両方が記載されていることもあり、どちらを優先して確認するかを整理しておく必要があります。

IEC(国際電気標準会議)

IECは、電気・電子分野の国際規格です。工場向けの産業機器では最も関わる機会が多い規格のひとつで、回路設計、制御盤、配線、EMC、安全設計まで広く影響します。代表例として、IEC 60204-1は機械の電気装置に関する規格で、制御回路、保護接地、非常停止、配線識別などを定めています。制御盤や装置の設計ではよく参照されます。

またIEC 61000シリーズはEMC関連の規格で、静電気放電(ESD)、サージ、EMIなどの評価に関するため、インバータやスイッチング電源を使う設備では特に重要です。さらに、IEC 61439は低圧配電盤や制御盤の規格で、温度上昇や短絡耐量、内部構造の要求があります。

実務では、IEC対応で苦労しやすいのが絶縁距離やEMCです。例えば高電圧部では沿面距離や空間距離が不足しやすく、基板サイズや部品配置の見直しが必要になることがあります。EMC試験では、試作段階でノイズが基準を超えてフィルタ追加やシールド補強になるケースもあります。後から対策すると設計変更の影響が大きくなりやすいため、初期段階から意識しておくことが重要です。

ISO(国際標準化機構)

ISOは産業全般を対象とした国際規格です。電気回路の細かな仕様というより、品質や設計プロセス、安全管理など、製品開発を支える仕組みに関わることが多い規格です。特に製造業でよく知られているのはISO 9001(品質マネジメントシステム)認証で、設計変更の管理や検査体制、記録管理などに関係します。

また、機械安全の分野ではISO規格が参照されることもあり、設備全体のリスクアセスメントや安全対策の考え方に影響します。難しい点は、規格そのものより「運用を継続すること」です。品質管理の仕組みを作っても、記録やレビューが形だけになると運用が崩れやすくなります。特に複数部門が関わる設備開発では、設計・調達・製造・品質保証で情報を共有できる体制づくりが重要になります。

UL(北米向け安全規格)

ULは、主に北米向けの安全規格です。工場設備では制御盤や電源装置、ケーブル、端子台などでよく関係します。北米案件では、部品単位でUL認証品を指定されるケースもあります。例えば電線やブレーカ、樹脂部品では認証の有無が求められることがあります。

実務で難しいのは、日本やIECと細かな要求が異なる点です。配線方法や端子の定格、筐体材料の難燃グレードなどに違いがあり、日本で問題ない設計でも北米では認められないことがあります。

また、設備全体で評価される場合、部品単位で認証されていても組み合わせ方や取り付け方法まで確認されます。後から代替部品に変更しにくいこともあるため、設計初期の選定が重要です。

CEマーキング(欧州)

CEは、欧州で製品を販売・導入する際に必要となる適合表示です。対象の指令に適合していることを示します。工場向け産業機器では、低電圧関連の要求やEMC関連の要求が中心になります。装置によっては機械安全の要求も含まれます。

実務で難しいのは、部品単位ではなく設備全体として評価されるケースがあることです。個別部品が規格対応していても、完成品としてノイズや安全性が満たせなければ適合できません。

また、必要な技術文書や評価記録の整理も重要です。設計上は問題なくても、根拠資料が不足すると対応に時間がかかることがあります。海外出荷が決まってから準備すると負担が大きくなるため、初期段階から進めておくとスムーズです。

まとめ

工場で使う産業機器には、安全性や信頼性、各国の法規対応を満たすためにさまざまな規格があります。JIS、IEC、ISO、UL、CEなど対象は幅広く、納入先や機器の構成によって必要な規格は変わります。

特に制御盤やインバータ、電源装置などでは、絶縁、EMC、保護回路が設計と密接に関わるので、設備を安定して運用するための設計条件としても重要です。そのため、工場向けの産業機器を開発する際は、初期段階から必要な規格を整理し、回路・レイアウト・構造に反映できるよう、詳しく知識を得ておくとよいでしょう。

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