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トラック向け電気自動車(EVトラック)は普及する?電動化の課題や商用車の動向を解説!

2023.10.09更新

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この記事を書いた人

機電系専門ライター Div.長谷川

長谷川

FREE AID編集部 機電系専門ライター Div.
アナログ回路設計・営業を経験した後ライター&ディレクターとして独立。
電気電子・ITジャンルを得意とし、正確で分かりやすい情報の発信を行っています。

カーボンニュートラルを目的に、自動車業界では電動化の流れが進んでいますが、トラックは走行距離やコストの問題から電動化が避けられてきました。しかし、最近になって風向きが変わり、EVトラック市場が年間数十%の勢いで成長すると言われるほどの成長を見せています。今回は、そんなEVトラックの技術的な課題と、最近の動向について解説します。

EVトラックが持つ課題

まず、EVトラックの普及において、課題となるポイントを解説します。

航続距離が短い

トラックは基本的に走行距離が長いので、一般車よりも航続距離が求められます。また、トラックは荷物を載せて走るため、それだけ大きな容量を持つバッテリーを取り付けなければなりません。しかし、バッテリーは重くかさばることから、バッテリーを増やしすぎると燃費や積載可能量が悪化し、結果的にトラックとしての競争力をなくします。

現在販売されているEVトラックは、最長でも航続距離は400kmほどであり、特に一日で1000km以上走るような長距離輸送トラックとして使うのは難しいです。

充電時間が長すぎる

航続距離の問題が解決したとしても、残るのが充電時間の長さです。急速充電が普及してきてはいますが、トラックは乗用車と比べてバッテリー容量が大きいため、充電には1時間以上必要となります。トラックは荷物の輸送距離に応じて収益が出るため、車を動かせない時間が収益の悪化に直結することから、大きなデメリットといえるでしょう。

導入コストが高い

EVトラックの販売価格が高いことも、無視できないデメリットです。EVトラックはバッテリーのコストが非常に高いため、ガソリン車・ディーゼル車と比べると倍以上の販売価格となることが想定されています。

ゼロカーボン政策に伴う補助金で、ある程度は購入価格が下がると予想されますが、それでもガソリン車より安価となる可能性は低いです。トラックの場合は主に運送会社がビジネス目的で購入することから、コストが特に大きな障害となるでしょう。

寿命が短い

バッテリーは充電を繰り返すことで性能が悪化していきます。バッテリーは車のエンジンと同様の基幹部品のため、バッテリーが劣化するということは車としての寿命が切れることと同義です。乗用車においても、バッテリー寿命はおおよそ16万kmまたは10年と規定されていますが、長距離を走るトラックの場合、高い頻度でバッテリーを充電する必要があるため、どうしても寿命は短くなる傾向になります。

寿命が短いと総合的なコストが高くなるため、さらに導入ハードルは高くなるでしょう。

FCVという選択肢がある

さらに、トラックについてはFCV(燃料電池車)の方がメリットが多いのも、EVトラックにとっての課題です。乗用車では下火のFCVですが、航続距離が長く素早い充電が可能という点で、トラックの長距離輸送に適しています。

FCVでも燃料ステーションの不足など課題はありますが、EVトラックの課題解決が難しいこともあり、FCVトラックが今後の主流になると予想されています。

EVトラックが普及し始めた理由

このように、課題の山積しているEVトラックですが、2021年になって普及が進み始めており、特に中国では高い需要の伸びを示しています。その主な理由を紹介します。

航続距離の改善が進んでいる

最も大きな課題だった航続距離の改善が、近年急激に進んでいることが一つの理由です。例えば、ボルボは新型EVトラックの航続距離を前モデル比で80%向上し、最大440kmを達成しています。他にもアメリカのEVトラックメーカー「ニコラ」が航続距離563kmのトラックを発売するなど、航続距離の延長が進んでおり、EVトラック導入に対する最も高いハードルが改善されつつあります。

充電時間の長さや寿命など、他の課題はまだ解決されていませんが、最低限の前提条件は整ってきていると言えるでしょう。

電池交換式という選択肢も

現在、EVトラックの需要増をけん引しているのは中国ですが、中国のEVトラック市場では電池交換式のEVトラック販売数が一気に増加しています。バッテリーの交換時間が短いほか、車両と電池を別々に購入可能で、バッテリーをリース形式でレンタルでき初期費用が抑えられるなど、EVトラックが持つ欠点を補えることが理由です。

中国政府の後押しがあること、また中国以外では普及が進んでいないためこれからの市場動向は不明ですが、EVトラック市場に一石を投じる可能性があります。

各国の補助政策が増加

カーボンニュートラルに向けた政策の中で、自動車のEV化は順調に進みつつありますが、商用車についてはまだまだ普及が進んでいない状態です。しかし、世界各国では商用車についてもガソリン車廃止の方向で政策が定められており、最短で2030年までに一定割合の商用車が脱炭素化する予定です。

商用車に対する脱炭素政策
日本 2040年までに全ての小型商用車の新車販売をZEV(BEV/FCV)化
欧州 2040年までに全ての商用車の新車において脱化石燃料を実現
中国 2035年までに乗用車・商用車合わせて50%以上の新車をZEV(BEV/FCV)化
米国(カリフォルニア州) 2045年までに同州で走行するトラックをゼロエミッション車のみとする

これらの政策を実現するには、急ピッチでEVやFCVの普及を進める必要があるため、各国の政府はさまざまな形で導入支援を行っています。今後も普及状況によっては支援が加速する可能性が高いため、EV導入への金銭的なハードルは解決できるでしょう。

ちなみに日本では、国土交通省や環境省がEVやHVの購入時にかかる経費の一部を補助する補助金制度を導入しています。

EVトラックの主なメーカーと開発状況

最後に、国内外のメーカーによるEVトラックの開発状況について解説します。

いすゞ自動車

いすゞ自動車は、2022年度中に2~3トンクラスの小型EVトラック「エルフ」を量産開始する予定です。2019年より実車試験を運送会社と提携して行っており、運転席と荷台を行き来できるウォークスルー形式で人気を集めています。走行距離などの課題は残っているものの、中型や大型トラックの開発も積極的に行っており、日本のEVトラック業界をけん引する存在として注目されています。

日野自動車

日野自動車も、ラストワンマイル向けの小型トラック「デュトロ Z EV」を2022年の初夏に発売予定です。EVの構造を活かし、荷台を超低床にしてウォークイン可能とし、ドライバーの負荷を低減しているのが特徴です。

三菱ふそうトラック・バス

三菱ふそうでは、近距離の輸送に適した小型EVトラックの「eCanter(eキャンター)」を販売しています。リース専用であり量産は行っていませんが、発売してからの販売台数は300台を超えており、日本や欧州で今も活躍しています。2017年に初代のEVトラックを発売したほか、2022年時点でも新型の開発を継続しており、航続距離延長や安全機能の追加、ラインナップの拡充などが行われる予定です。

ボルボ

ボルボは、車両総重量が15トン以上となる大型EVトラック「VNRエレクトリック」を販売しています。2020年12月に発売され、当初は航続距離が220km程度でしたが、2021年に改良版を発売、航続距離440kmを実現しています。

ボルボは、2030年までに販売するトラックの50%を電気自動車にするという目標も掲げてさらなる開発も進めており、EV、FCVメーカーとしての存在感を強めています。

リヴィアン

リヴィアンは2009年に設立されたアメリカの新興EVメーカーです。SUVとピックアップトラックの開発に注力しており、2021年に初の市販車となる、EVピックアップトラックを発売しています。現在は乗用車の販売のみを行っていますが、アマゾン向けEVバンの生産など商用車の販売も予定しており、物流面へのEV普及に大きな役割を果たす可能性があります。

テスラ

テスラは、ピックアップトラック「Semi」を開発しています。2021年の発売が計画されており、特殊な材質と形状から注目を集めていましたが、開発が難航しており2023年の発売に延期されています。

まとめ

今回は、トラック業界における電気自動車の普及状況についてお伝えしました。現状、電気自動車は航続距離の短さや充電時間の長さなど欠点が多く、頻繁に長距離を走るトラック向けは普及が進んでいません。しかし、商用車についてもガソリン車廃止の流れが進んでおり、EV化を進めるための補助政策も加速していることから、電気自動車の普及は近い将来実現すると予想されます。EVトラックはまだ黎明期です。今後数年間の急激な成長を注視しておきましょう。

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